研究課題/領域番号 |
26450480
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
大野 良子(豊住良子) 神戸大学, 自然科学系先端融合研究環重点研究部, 学術研究員 (00398827)
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研究分担者 |
宅見 薫雄 神戸大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (50249166)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | バイオマス / バイオ燃料 / セルラーゼ / 稲わら |
研究実績の概要 |
わらなどの主成分であるセルロースの糖化の効率化のため、セルラーゼなどの細胞壁分解酵素をあらかじめ発現する形質転換植物の開発が進められている。しかし、外来の酵素発現量が微量であることや、セルラーゼの発現によって生育期に生長・形態異常が生じる場合がある。そこで本研究では、我々がコムギから単離した乾燥誘導性プロモーター、細胞外排出シグナルを利用して、外来セルラーゼを収穫直前の稲わらで発現するイネの開発を行う。発現を植物の発生の最後の時期(収穫直前)の細胞間隙で行うことにより、生育期の形態異常を伴うことなく外来セルラーゼを安定して発現できるようになると考えられる。 今年度の主な成果を以下に挙げる。(1)コムギから単離した低温誘導性タンパク質WLT10のN末に存在する20アミノ酸からなるシグナル配列の細胞外排出活性をタマネギ表皮細胞で検証した結果、小胞体、ゴルジ体を経由して細胞外に排出されることが明らかになった。(2)コムギWdhn13プロモーターの乾燥応答性を作製した形質転換シロイヌナズナを用いて調べた結果、Wdhn13プロモーターによる乾燥応答性が確認でき、Wdhn13プロモーターは、単子葉植物・双子葉植物を問わず乾燥処理によって遺伝子発現を誘導できるプロモーターとして利用可能であることが明らかになった。(3) Wdhn13プロモーター、WLT10シグナル配列を利用して稲わらで糸状菌のセルラーゼを発現するためのコンストラクトを構築した。これらのコンストラクトを導入した形質転換植物は現在作製中であるが、今後これらの形質転換体を用いて糸状菌セルラーゼの糖化性や植物体の形態、生長への影響などが評価できると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、収穫後のわらのセルロースを容易に糖に分解できるイネの開発を行うことを最終目標とするが、そのためには、まず、コムギから単離した乾燥誘導性プロモーターや細胞外排出シグナルがイネにおいても機能するかどうかを確かめる必要がある。本年度は、シロイヌナズナやタマネギを用いてWdhn13プロモーターの乾燥応答性、WLT10シグナル配列の細胞外排出活性を明らかにすることができた(Ohno and Takumi 2015)。イネで解析するためのコンストラクトの構築も終了したので、今後はイネでの確認を行う。またイネでセルラーゼを発現するためのコンストラクトの構築も順調に進展したので、現在作製中の形質転換植物を用いて今後、糖化性や植物体の形態、生長への影響などを評価する。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、現在作製中の外来セルラーゼを発現する形質転換イネを用いて以下の解析を行う。(1) セルラーゼの発現による形質転換体の生長、形態への影響を明らかにする。(2)セルラーゼの蓄積量、活性を測定する。(3)導入したセルラーゼの発現によって稲わらの糖含量が変化するか調べる。(4)セルラーゼの発現が糖化能力に与える影響を調べる。 これらの解析によって、形質転換イネのセルラーゼ蓄積量とセルラーゼ活性、生長・形態変化、糖化能力との相関関係を明らかにして、コムギの乾燥誘導性プロモーターや細胞外排出シグナルを用いてセルラーゼを発現することが、生育・形態異常を伴わず糖化されやすいイネの開発につながるかどうかを検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定通り、コムギから単離した乾燥誘導性プロモーターや細胞外排出シグナルが機能することをシロイヌナズナやタマネギを用いて明らかにすることができた。しかし、イネで解析するためのコンストラクトの構築は終了したものの、まだイネでの確認はできていない。そのために予定の実験を全て行うことができず、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
コムギから単離した乾燥誘導性プロモーターや細胞外排出シグナルがイネにおいても機能するかどうかを確かめるために作製したコンストラクトや、セルラーゼを導入した形質転換体を用いた解析が中心となるため、物品費や試薬代などの消耗品費を中心に研究費の執行を計画している。また、これまでに得られた成果の発表や関連研究の情報収集のための旅費や、論文執筆に際しての英文校閲代などを見込んでいる。
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