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2014 年度 実施状況報告書

無機硫黄化合物の酵素化学の確立とその応用

研究課題

研究課題/領域番号 26450482
研究機関岡山大学

研究代表者

金尾 忠芳  岡山大学, その他の研究科, 准教授 (40379813)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2017-03-31
キーワード硫黄代謝 / 硫黄酸化細菌 / 無機硫黄化合物 / 酵素化学 / 好酸性細菌 / 酵素の結晶化 / refolding / 構造解析
研究実績の概要

無機硫黄化合物の酵素化学の研究のために、硫黄酸化細菌の一種 Acidithiobacillus ferrooxidans 由来のテトラチオン酸ハイドロラーゼ(Af-Tth)を対象とした。本酵素は、還元型無機硫黄化合物のテトラチオン酸(S4O62-)の加水分解反応を触媒する極めてユニークな酵素である。従って、その反応機構の解明は「硫黄の化学」として極めて興味深い。微生物の還元型無機硫黄化合物代謝については主に2種類の代謝系が存在し、これに関係する酵素についても数種類以上が結晶解析レベルでそれらの反応機構が解明されてきた。その結果より、これらの酵素のほとんど全てが活性中心にシステイン残基を有し、このチオール基が基質である無機硫黄化合物と反応することで酵素活性を持つことが解明されている。つまり無機硫黄化合物を基質とする酵素においてシステイン残基は、その触媒活性に必要不可欠であると考えられている。一方、Af-Tthの遺伝子から推定されるアミノ酸配列は、499アミノ酸に対してシステインは唯一であった(C301)。従って、このシステイン残基の役割を調べるために、部位特異的変異酵素(C301A)を作成し酵素活性やサブユニットの会合などを野生型酵素と比較した。この結果、Af-Tth C301A は野生型酵素と活性やサブユニットの会合において、ほぼ同様の結果を示した。このことはAf-Tthが他の硫黄代謝関連酵素とは異なり、システイン残基がその反応の触媒として関与しない新規な反応機構を有している可能性を強く示唆した。現在、Af-Tthの結晶化に成功しており、これのX-線結晶構造解析を推進している。本酵素の立体構造を決定し、活性中心と反応機構を解明することで新規な無機硫黄化合物の酵素反応への知見が得られる。同時に「硫黄の化学」として教科書の新たな1ページを形成することも期待できる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

新規な無機硫黄化合物代謝酵素であるAf-Tthの結晶化とX-線回折像の獲得に成功したことは大きな収穫であった。また、新規構造であるため分子置換法による構造決定ができなかったが、セレノメチオニン置換酵素を作成し、これも同様に結晶化に成功したことから、異常散乱法による位相と構造決定が可能となった。現在はデータの解析により構造決定を推進している。この間、システイン残基の活性への役割を調べる実験としてC301A変異酵素の作成と解析を行ったが、変異が活性などに影響を与えず、本酵素はシステイン残基に依存しない新規な反応機構を有している可能性が強く示唆された。

今後の研究の推進方策

Af-Tthがシステイン残基に依存しない新規な反応機構を有する可能性があることから、この反応機構を解明することを第一の目標として研究を推進する。具体的には、本酵素の結晶を作成してこれに基質となるテトラチオン酸溶液を浸透させることで、酵素-基質複合体の結晶を得る。この結晶にX-線を照射して構造解析を行うことで、酵素タンパク質内での基質の結合部位の特定および活性中心とそれに関わるアミノ酸残基を特定する。そしてこれらのデータより反応機構の推定を行う予定にしている。場合によっては、基質だけでなく生成物のチオ硫酸(S2O32-)の溶液を浸透させて複合体の結晶を作成し、構造解析も行う。さらに、反応機構が推定されれば、活性中心に関わるいくつかのアミノ酸を部位特異的変異によって置換し、これを実証する。

備考

発表論文 Kanao T. et al, Biosci. Biotechnol. Biochem.2014, 78 (12) 2030-2035 は、2014年の BBB 論文賞を受賞した。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2015 2014

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] The sole cysteine residue (Cys301) of tetrathionate hydrolase from Acidithiobacillus ferrooxidans does not play a role in enzyme activity2014

    • 著者名/発表者名
      Kanao T., Nakayama H., Kato M., Kamimura K.
    • 雑誌名

      Biosci. Biotechnol. Biochem.

      巻: 78 ページ: 2030-2035

    • DOI

      10.1080/09168451.2014.948374.

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [学会発表] 鉄硫黄酸化細菌Acidithiobacillus ferrooxidansの異なる生育基質におけるタンパク質の解析2015

    • 著者名/発表者名
      田原奈津美、上村一雄、金尾忠芳
    • 学会等名
      日本農芸化学会中四国支部
    • 発表場所
      水産大学校・山口
    • 年月日
      2015-01-24
  • [学会発表] 鉄酸化細菌のチオ硫酸デヒドロゲナーゼの性質2015

    • 著者名/発表者名
      秋田康裕、金尾忠芳、上村一雄
    • 学会等名
      日本農芸化学会中四国支部
    • 発表場所
      水産大学校・山口
    • 年月日
      2015-01-24
  • [学会発表] Purification and properties of thiosulfate dehydrogenase from marine Acidithiobacillus thiooxidans.2015

    • 著者名/発表者名
      Sultana Sharmin, Tadayoshi Kanao, Kazuo Kamimura
    • 学会等名
      日本農芸化学会中四国支部
    • 発表場所
      水産大学校・山口
    • 年月日
      2015-01-24

URL: 

公開日: 2016-05-27  

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