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2015 年度 実施状況報告書

無機硫黄化合物の酵素化学の確立とその応用

研究課題

研究課題/領域番号 26450482
研究機関岡山大学

研究代表者

金尾 忠芳  岡山大学, その他の研究科, 准教授 (40379813)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2017-03-31
キーワード硫黄代謝 / 硫黄酸化細菌 / 無機硫黄化合物 / 酵素化学 / 好酸性細菌 / 酵素の結晶化 / refolding / 構造解析
研究実績の概要

平成27年度は、結晶化に成功した鉄硫黄酸化細菌の硫黄代謝酵素の一種、テトラチオン酸ハイドロラーゼ(Af-Tth)の結晶構造解析に焦点を絞って研究を推進した。セレノメチオニン置換した本酵素結晶を作成し、大型放射光施設SPring-8のビームラインを使用し、SAD/MAD法によって位相を決定した。またNative結晶の回折像データも2.15Aの分解能で得ることができた。これらデータの解析を行い、本酵素の構造を決定することに成功した。また本酵素の結晶はP3_2の空間群であることが分かった。この結果を構造分類データベースのSCOPで検索したところ、本酵素の構造はClass: All beta proteins, Fold: 8-bladed beta-propellerに分類された。さらに基質であるテトラチオン酸溶液に浸漬した結晶にX-線照射して2.25Aの分解能を持つ回折像データを得た。得られたデータを解析した結果、Native結晶データでは観察されなかった新たな分子の電子雲が確認でき、これが基質のテトラチオン酸であると推定され、本酵素の活性中心をつきとめることができた。しかしながら今回得られたの回折像には明瞭な反射の他に微弱な反射が確認され、活性中心のアミノ酸残基と基質の電子雲が明瞭ではなく、基質分子を電子雲に正しく配置することはできなかった。今後は引き続き同様の解析を進めることで、より分解能の高いデータを得ることで、本酵素の反応メカニズムの解明を目指す。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

Af-Tth結晶から位相を決定し、X-線回折像データ解析より本酵素の立体構造の決定に成功した。また基質溶液に本酵素結晶を浸漬する手法により酵素基質複合体を形成した結晶の回折像データを得られたのは、大きな収穫であった。これにより、酵素の立体構造において基質結合部位を決定することができるだけでなく、そこに関わるアミノ酸残基を特定することが可能となるため、最終目的である本酵素の反応メカニズムの解明に向けて大きく前進した。

今後の研究の推進方策

概要でも述べたが、Af-Tth結晶を基質溶液に浸漬することで酵素基質複合体の結晶を得ることができた。これにX-線を照射し、回折像データを得る。高い分可能を得るためには良質な結晶を得ることが必要となるので、酵素の精製度を高めることや結晶化条件を微調整する。また、良質な結晶データが得られる可能性が高めるためには、回数をこなすことも必要である。このため、大量に結晶を作成するなどして、良質な結晶の生成する確立を高めていく。
基質と活性中心のアミノ酸残基の立体配置を決定し、反応メカニズムの推定を目標とする。またその反応の正当性を部位特異的変異酵素を作成することで実証する。本酵素はシステイン残基に依存しない全く新しい反応メカニズムを有すると考えられ、本研究テーマの「無機硫黄化合物の酵素化学」として新たな1ページを飾るに相応しい成果が期待できる。

次年度使用額が生じた理由

年度末に急に必要となり注文した試薬がキャンペーン割引価格であったため、その差額として820円の残高が発生した。

次年度使用額の使用計画

試薬消耗品の購入に充てる。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2016 2015

すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (5件)

  • [雑誌論文] Characterization of a novel thiosulfate dehydrogenase from a marine acidophilic sulfur-oxidizing bacterium, Acidithiobacillus thiooxidans strain SH.2016

    • 著者名/発表者名
      Sharmin S., Yoshino E., Kanao T., Kamimura K.
    • 雑誌名

      Biosci. Biotechnol. Biochem.

      巻: 80 ページ: 273-278

    • DOI

      10.1080/09168451.2015.1088377

    • 査読あり / 国際共著 / 謝辞記載あり
  • [学会発表] 鉄硫黄酸化細菌Acidithiobacillus ferrooxidans由来テトラチオン酸ハイドロラーゼの結晶構造解析2016

    • 著者名/発表者名
      長谷成記、中山久之、小坂恵、玉田太郎、上村一雄、金尾忠芳
    • 学会等名
      日本農芸化学会年次大会
    • 発表場所
      札幌
    • 年月日
      2016-03-28 – 2016-03-30
  • [学会発表] 海洋性好酸性硫黄酸化細菌Acidithiobacillus thiooxidans SH株のゲノム解析2016

    • 著者名/発表者名
      金尾忠芳、スルタナ シャーミン、上村一雄
    • 学会等名
      日本農芸化学会年次大会
    • 発表場所
      札幌
    • 年月日
      2016-03-28 – 2016-03-30
  • [学会発表] A. ferrooxidansのチオ硫酸代謝酵素系の解析2016

    • 著者名/発表者名
      上村一雄、高田弓梨乃、金尾忠芳
    • 学会等名
      日本農芸化学会年次大会
    • 発表場所
      札幌
    • 年月日
      2016-03-28 – 2016-03-30
  • [学会発表] Acidithiobacillus ferrooxidans の新規チトクロームcの機能解析2016

    • 著者名/発表者名
      高田弓梨乃、大西裕有、金尾忠芳、上村一雄
    • 学会等名
      日本農芸化学会中四国支部例会
    • 発表場所
      岡山
    • 年月日
      2016-01-23 – 2016-01-23
  • [学会発表] Draft genome sequence of acidophilic and halophilic sulfur-oxidizing bacterium Acidithiobacillus thiooxidans2015

    • 著者名/発表者名
      Sultana Sharmin, 金尾忠芳、上村一雄
    • 学会等名
      日本農芸化学会中四国支部例会
    • 発表場所
      鳥取
    • 年月日
      2015-06-13 – 2015-06-13

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公開日: 2017-01-06  

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