研究実績の概要 |
当該研究では既に、A. ferrooxidansの4THase遺伝子(Af-tth)を世界で初めて同定し、これを大腸菌で組換え発現させて得た封入体から酸性refolding処理により活性型酵素を獲得する新規な手法を開発した。これにより組換え型Af-Tthの大量取得が可能となり、高度に精製することで結晶化にも成功した。 本研究において作成したAf-Tth結晶をSPring-8のビームラインでX-線照射実験を行い、結晶構造データを回収した。しかし本酵素は新規な構造を有するため、分子置換法による構造決定ができなかった。そこでセレノメチオニン置換したAf-Tth結晶を作成し、同様にX-線照射によるデータを回収した。このデータを解析し位相を決定後、本酵素の空間群(P32)格子定数(a=b=94.7, c=234.3)など結晶学的性質を解明した。さらに基質のテトラチオン酸や生成物のチオ硫酸溶液に浸漬した結晶のX-線照射データを解析することで本酵素の反応機構の解明を目指した。その一方で、酵素タンパク質の一次配列の比較から反応機構の解明にも取組んだ。システイン残基は、そのチオール基が基質の硫黄原子と反応することから、無機硫黄化合物を基質としたほとんどの酵素の活性中心に関わっている。そこでAf-Tthの一次配列を調べたところ、システイン残基は全499アミノ酸中で唯一(C301)存在した。これを部位特異的変異導入でアラニン置換した変異酵素(Af-Tth C310A)を作成し、その活性や分子量の測定、結晶構造解析を行い野生型酵素と比較した。その結果、この変異酵素は野生型とほとんど変化がなく、C301は本酵素において重要な働きをなさないことが明らかとなった。このことは同時に、Af-Tthが他の硫黄代謝関連酵素で見られるシステイン依存性の反応機構とは全く異なる反応メカニズムを持つ可能性が示唆された。
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