アルミニウムイオン(Al)は酸性土壌での植物、特に作物の生育に多大な影響を与えることから増加する人口に対応する食糧増産にとって重要な問題であると考えられている。Alの毒性機構としては、酸化ストレスあるいは膜脂質流動性の攪乱や、メタルイオンの恒常性の攪乱などが関与すると言われているが、その分子メカニズムの詳細はいまだ明らかにされてはいない。我々は酸性土壌に適応した植物・微生物共生系の研究に取り組んできたが、高濃度Al 耐性微生物のAl 耐性と膜脂質組成の間に強い相関があることを見出した。本研究では、高濃度Al耐性微生物あるいは出芽酵母などのモデル微生物について、ゲノム情報に基づき作成された各種変異株の脂質を精密かつ網羅的に(lipidomics) 解析し、Al 毒性および耐性と膜脂質の関係を明らかにすることを目指している。 昨年度の研究で、モデル生物である出芽酵母BY4741 株由来のノックアウト・コレクション(4826 株)から確定させたAl感受性に変化を生じた変異株について、本年度はエンドサイトーシスや膜脂質組成や脂質細胞内局在性などのそれぞれの細胞機能とAl毒性や耐性の関係について検討を進めた。 一方、高濃度Al耐性微生物を用いた研究については、昨年度までにAcidocella aluminiidurans AL46 株およびRhodotorula taiwanensis RS1 株の脂質組成の検討を進め明らかにした水酸化脂肪酸量とAl感受性の関連の可能性について、さらに検討を進めた。 これら2つの成果について国際学会で発表した。
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