研究課題/領域番号 |
26450486
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
中島 泰弘 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境変動研究センター 物質循環研究領域, 主任研究員 (10354086)
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研究分担者 |
江口 定夫 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境変動研究センター 物質循環研究領域, ユニット長 (30354020)
伊藤 優子 国立研究開発法人森林総合研究所, 立地環境研究領域, 主任研究員 (60353588)
吉川 省子 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境変動研究センター 物質循環研究領域, 主席研究員 (60502937)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 硝酸イオン / 安定同位体 / 森林 / 農耕地 / 集水域 / 酸素同位体異常 |
研究実績の概要 |
筑波山の森林域および筑波山を水源とする水田を主とする農耕地を対象とし,林内雨,土壌水,渓流水,農業用水,農業排水,河川水を採取し,硝酸イオンの濃度および窒素(δ15N)・酸素(δ18O,Δ17O)安定同位体自然存在比を測定することにより,対象地域に流入・流出する硝酸態窒素の起源を明らかにした. 硝酸イオンの安定同位体比プロファイルから,硝酸態窒素の起源を概ね三種類に分類することができた.一つは霞ヶ浦用水に代表される,低δ15N・低δ18O・低Δ17Oのプロファイルを持つ硝酸態窒素である.これらは畜産あるいは脱窒等の影響からδ15Nおよびδ18Oがやや高めであるものの,Δ17O異常は見られず,一般的な閉鎖系水域に典型的な値を示した.もう一つは林内雨に代表される,低δ15N・高δ18O・高Δ17Oのプロファイルを持つ硝酸態窒素である.これらはδ15Nは低いが,δ18OおよびΔ17Oが高く,降下物の影響を強く反映した値を示した.最後は森林域の土壌水に代表される,低δ15N・低δ18O・低Δ17Oのプロファイルを持つ硝酸態窒素である.これらは霞ヶ浦用水とよく似た特徴を持つが,δ15Nがやや低く降下物由来の硝酸イオンとほぼ同等の値を示す.既往の報告から,降下物由来の硝酸イオンが一旦微生物や植物等に吸収されることによって酸素原子が外れ,硝化によって再度酸素原子が付加されることが知られており,ここでも同様の現象が起きていることが推察される.また渓流水は降下物と土壌水の混合物,農業用水は渓流水と霞ヶ浦用水の混合物,農業排水は農業用水と渓流水の混合物,河川水は全ての混合物としての特徴を有していた.特に農業排水においてはいくつかの地点でΔ17O異常を持つプロファイルを有しており,従来のδ15Nおよびδ18Oの解析のみでは不明であった窒素源の情報についてより詳細に推測することが可能となった.
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