研究課題/領域番号 |
26450488
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
近藤 哲也 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (10153727)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | エンレイソウ / オオバナノエンレイソウ / 発根 / 出芽 / 温度 / 胚生長 |
研究実績の概要 |
自生地からの種子採取:種子の熟期を確認するために自生地を数回訪れ,エンレイソウは7月上旬に,オオバナノエンレイソウは7月下旬に採種した。 野外実験における胚成長,発根および出芽のフェノロジー:種子の採取後,直ちにミクロトームを用いて種子の切片を作成し,マイクロメータを装着した光学顕微鏡で胚の長さを測定した。残りの種子は不織布に入れて植木鉢に埋土し,毎月種子を堀りあげて胚長を測定している。発根時期の調査では不織布に種子を入れたものを24セット準備して,毎月1セットずつ堀りあげて発根率を調査している。エンレイソウでは,10月までに約50%の種子が発根し(初年度発根),残りの種子は未発根であった。しかし,オオバナノエンレイソウでは,年内に発根した種子はなく,胚も生長しなかった。エンレイソウでは,初年度に発根した種子を植木鉢に播種して,翌春の出芽時期を調査している。エンレイソウの未発根種子とオオバナノエンレイソウの種子では,発根した種子の出芽する時期を明らかにするために,種子を育苗箱に埋土して,今年の夏頃の発根を待っている。また,温度と胚成長,発根および出芽時期との関連を検討するために,地表面の温度をデータロガーを用いて記録している。 室内実験での発根:それぞれの種の発根に必要な温度条件を明らかにするため,温度勾配恒温器を用いた室内実験を実施した。プラスチックシャ-レに濾紙を敷いた播種床に播種した後,シャーレを2重のアルミ箔に包んで光を遮断した暗条件とし,パラフィルムで密封して水分の蒸発を防いだ。温度条件は,温度勾配恒温器と低温恒温器を用いて,エンレイソウとオオバナノエンレイソウが共に分布している北海道札幌市とエンレイソウのみが分布している茨城県笠間市の,それぞれ7月以降と8月以降の季節を再現した温度処理区を設けた。発根率の調査は毎月実施し,同時に水分を補給している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は初年目であるため,自生地からの種子の採種と予定された実験のセッティングが主な仕事となった。これまでの予備調査で自生地を確認しておいたため,エンレイソウおよびオオバナノエンレイソウの種子ともに十分な数の種子を採取できたため,予定通りの実験を実施できた。 しかし,エンレイソウの室内実験では,季節の温度を再現した一つの処理区で,温度設定を間違えたため,今年度に追試を行わなければならなくなった。
|
今後の研究の推進方策 |
エンレイソウの種子もオオバナノエンレイソウの種子も,複雑な休眠を要するため,発根から出芽の完了のためには2年ほどを要する。野外では,エンレイソウは約50%の種子が採種した年(昨年)に発根したが,昨年発根しなかった残りの未発根の種子とオオバナノエンレイソウの種子は,今年の夏頃に発根し,来年の春に地上部に出芽すると推測されるため,定期的に着実に調査を続ける。 室内実験においてもシャーレには播種された種子のカビの発生を抑えながら,長期間維持しなくてはならない。すなわち,野外での胚成長や発根,および室内実験での発根のための実験は,今年度中に終了する予定であるが,発根した種子が出芽するのは,再来年度の春と予測されるため,地道に調査実験を継続する。 また,【現在までの達成度】でも記述したように,エンレイソウでは室内実験の追試を実施する。
|