研究課題/領域番号 |
26450488
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
近藤 哲也 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (10153727)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | エンレイソウ / オオバナノエンレイソウ / 発根 / 出芽 / 胚生長 / 温度 |
研究実績の概要 |
【野外実験における胚成長,発根および出芽のフェノロジー】胚の生長過程を知るための調査では,まず,採種後の胚の長さを測定し,その後一定量の種子をビニルポットに埋土し,毎月堀りあげて胚長を測定した。胚生長の実験とは別にビニルポットに埋土した種子を毎月堀りあげて発根率を調査した。 エンレイソウでは,播種した年内に約50%の種子の胚が成長して発根し,残りの種子は冬を経た2015年の6月から8月にかけて胚が生長して発根した。2014年に初年度発根した種子は, 2015年4月には97%が出芽した。 一方,オオバナノエンレイソウでは,播種した2014年のうちに胚が成長した種子はなく,播種後に冬を経た2015年9月に胚が成長して94%の発根率を示した。2015年に発根した種子はその年のうちには出芽しなかった。 【室内実験における温度と発根との関連】発根に必要な温度条件を明らかにするため,温度と光を組み合わせた発芽実験を実施した。暗条件として,エンレイソウとオオバナノエンレイソウが共に分布している北海道札幌市と,エンレイソウのみが分布している茨城県笠間市(札幌市より5℃高く設定)の季節を再現した温度区で発芽実験を行った。 エンレイソウ,オオバナノエンレイソウともに札幌市における結実・種子散布の時期(エンレイソウでは7月,オオバナノエンレイソウでは8月)以降の季節を再現した温度では,野外の実験とほぼ同様の発根経過を示した。すなわち,エンレイソウでは,結実した年に50%程度発根して冬の温度を経過した後の初夏に残りの種子が発根した。一方,オオバナノエンレイソウでは結実した年には全く発根せず,冬の温度を経過した初夏のみに発根が見られた。しかし,笠間市の温度を再現した温度では,エンレイソウでは結実した年に50%以上発根したものの,オオバナノエンレイソウでは,結実した年に20%程度発根したにとどまった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年目である2014年では,種子採取および【野外実験における胚成長,発根および出芽のフェノロジー】は,順調に進展し,満足できる結果が得られた。しかし,【室内実験における温度と発根との関連】における,オオバナノエンレイソウの室内実験では,笠間市の7月の温度を再現した温度処理区で,設定を間違えたため,2015年に再度種子を採種して追試を行っている。その実験は,2016年の秋に完了する。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度2016年度は,科学研究費助成事業の最終年度である。 次年度は,本年度2015年に発根したオオバナノエンレイソウの種子が初夏に出芽を開始すると推測される。また,2014年の室内実験の追試は,2016年の10月に完了する予定である。 すでに一部のDATAをまとめつつあるが,できるだけ速やかにDATAの整理を完了し,論文投稿の準備を進める。 札幌市で生育しているオオバナノエンレイソウは,例年の温度では種子が散布された年には発根しないが,例えば,笠間市のように温度が高い地域では,数十%は種子が散布されたその年に発根することが実験によって明確に示された。このことは,オオバナノエンレイソウの種子の発根フェノロジーは気温によって変化することを示しており,気候変動によって札幌市の気温が上昇すれば,エンレイソウと同じように,結実した年に一定量の種子が発根することを意味している。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成28年3月勤務分の研究支援員給与の支出が平成28年度となったため,次年度に使用すべき金額が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
上記の研究支援員給与を平成28年4月12日に支出予定。
|