研究課題/領域番号 |
26450491
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研究機関 | 放送大学 |
研究代表者 |
加藤 和弘 放送大学, 教養学部, 教授 (60242161)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 都市緑地 / バードサンクチュアリ / 植生構造 / 低木層植被率 / 落葉被覆率 / 鳥類群集 / 植生管理 |
研究実績の概要 |
8箇所の都立公園(うち4箇所はバードサンクチュアリまたはそれに準じる区域を設定)に71の調査区を設け、2015年12月より2016年2月にかけて、それぞれにて3回の調査を行ったところ、27種の鳥が記録された。分類型多変量解析手法であるTWINSPANを適用した結果、6以上の調査区に出現した19種は、出現傾向に基づき次のように分類できた。G1:植被が発達した限られた場所にのみ出現した種(アオジ、ウグイス、シメ、シロハラ、エナガ)、G2:植被が発達した場所を好むが最初のグループの種よりも広範囲で記録された種(コゲラ、オナガ、ヤマガラ)、G3:ほぼ全ての調査区で記録された種(メジロ、ハシブトガラス、ヒヨドリ、シジュウカラ、ツグミ、キジバト)、G4:ホンセイインコ、G5:ムクドリ、ドバト、ハクセキレイ、スズメ(いわゆる「都市利用種」) 調査区は、G1、G2に分類された種が多く記録された調査区のグループから、G1,G2に分類された種がほとんど記録されず、G5に分類された種が高い頻度で記録された調査区のグループまでの5つに分類された。バードサンクチュアリ内の調査区は全て、G1、G2に分類された種が多く記録された調査区のグループに含まれた。 6つ以上の調査区で出現した19種の記録個体数のデータを用い、制約付き序列化手法であるCCAを実行した。その結果、種組成のばらつきのうち説明可能な部分の大半は第1軸で説明された。第1軸のスコアは、亜高木層以外の階層における植被が発達するほど値が大きく、人通りが多いほど値が小さくなっていた。特に低木層植被率、草本層植被率、落葉被覆率の寄与が大きかった。 以上の結果から、保護のあり方と、植被の状態、さらに落葉の状態により、鳥の出現傾向がよく説明できるのではないかと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前回報告書にて報告したとおり、公園管理者との調整で予期しないトラブルが生じたために、現地調査への着手が遅れてしまった。昨年度中に越冬期の調査および越冬期の植生構造調査を終了し、現在、繁殖期の調査を実施中である(4/22日現在ほぼ1/4を終了)とともに、衛星画像や空中写真等を用いた景観生態学的諸条件についても解析を進めているところである。 最終的に、当初予定した研究計画は達成できる見通しであるが、万一の場合の予備日は設定できないため、修正後の現在の現地調査計画については遅滞なく進める必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
繁殖期の鳥類調査(各調査区において3回ずつ)を繁殖期中に完了する(4/22現在、6公園において1回の調査が完了している)。植生の階層構造調査、林床植物調査、毎木調査を秋までに完了する。衛星画像の分析など景観生態学的諸条件に関する分析も上半期中に完了する。 下半期においては、得られたデータの分析を行い、当初の研究目標の達成を期す。
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次年度使用額が生じた理由 |
調査対象とした公園管理者との調整に齟齬が生じ、調査許可がなかなか得られなかったことに伴い、研究の進捗が遅れたため。
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次年度使用額の使用計画 |
本来28年度においてはデータ分析を中心に進める予定であったが、少なくとも上半期は現地調査を優先させる必要がある。現地調査と並行してデータの分析を急ぎ進めるため、研究補助員を雇用する。ここに予算の多くを割り当て、残りの予算については、研究実施の上で不可欠な消耗品の購入と、野外調査の際の交通費に充てる。
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