8カ所の都立公園(うちバードサンクチュアリのあるもの3、それに準じる保護区のあるもの1)に計71の調査区を設け、調査を行った。越冬機の鳥類の種組成は、低層(高さ0-2m)の植被率、落葉被覆率、樹林地面積と保護区への近接度により説明され、低層の植被が発達しているほど、落葉に広く覆われているほど、樹林地が広いほど、そして保護区が近くにあるほど、ウグイスやシロハラ、アオジ、コゲラなど都市化に弱いとされる種が多く出現する傾向が見られた。逆の傾向を示した種は、ドバト、スズメ、ムクドリ、ハクセキレイであった。繁殖期の鳥類の種組成は、調査区内の落葉被覆率、臨床植物種数、歩行者数のほか、樹林地面積と公園周辺の植生指数により説明され、落葉に広く覆われているほど、近隣に植被が多いほど、歩行者が少ないほどメジロやエナガ、シジュウカラなど樹林性の種が多く出現した。逆の傾向を示した種は、ドバト、ムクドリ、スズメであった。ハシブトガラスとホンセイインコは広い樹林地内の林床植物種が多い場所によく出現し、オナガはそれと逆の傾向を示した。初認時に個体がいた場所は種によって異なり、ヤマガラやメジロは常緑樹を、ウグイスはササを、イカルやシメは落葉高木を、エナガ、コゲラ、シジュウカラ、ツグミは落葉樹を、それぞれ好む傾向があった。舗装地や人工構造物を好む傾向が見られたのは、ハクセキレイやスズメ、ドバトであった。以上から、バードサンクチュアリを含む保護区を設け、植生のあり方や人の立ち入りを管理することは、鳥類相を自然のものにより近づけるために効果的であると判断された。その際、従来から指摘されている植生の構造(下層植生の維持)だけでなく、落葉の保全にも配慮することが有効であることが示唆された。落葉中の節足動物や植物種子などが鳥の食物として役立っているためと考えられるが、この点についてはより直接的な調査研究が必要である。
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