研究課題/領域番号 |
26450492
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山田 晋 東京大学, 農学生命科学研究科, 助教 (30450282)
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研究分担者 |
小柳 知代 東京学芸大学, 環境教育研究センター, 講師 (80634261)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 刈り取り残渣 / レストレーション / フェノロジー / 結実種子 / 光量子束密度 / 草原生植物 |
研究実績の概要 |
結実種子を多量に含む刈り取り残渣は,植生復元の際に有効に利用することができる生態的緑化資材として重要であるが,同手法の適用事例はこれまでヨーロッパに限定されており,我が国を含むモンスーンアジア地域での利用可能性は明らかとなっていない。そこで,千葉県千葉市を研究対象地として,半自然草地における秋季の結実種子の形成時期を,やや被陰された,林縁や明るい林床環境と比較しながら調査した。9月下旬における結実種および結実種子数は,10月中旬および11月上旬と比較して著しく低かった。草原環境を指標する植物種は,半自然草地と林縁・林床においてともに記録されたが,後者においてはほとんど結実種子を確認することができなかった。林縁や明るい林床環境は,草原生植物が枯死せず残存している場合でも,その低い光量のために,草原生植物の結実は著しく阻害され,植生復元に用いる刈り取り残さとしての利用可能性は低いと考察された。 秋に年1回の地上部刈り取りによって維持されている,400g/m2のバイオマスを持つ半自然草地から刈り取り残渣を採取し,異なる厚さ(200,400,800,1600 g/m2)で播きだしたのちの芽生えた個体数およびその種名を確認した。1600 g/m2の残渣からの芽生えは著しく阻害され,800g/m2の残渣においても,とくに種子サイズの小さい種の発芽は著しく阻害された。400g/m2程度の厚さにおいて,単位面積当たりの発芽個体数が多くなり,この程度の播きだし圧が,草原環境を復元するための植生復元資材として刈り取り残渣を用いる際の適切な量となることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初,研究1年目より刈り取り残渣を用いた実地緑化試験を実施する予定であったが,刈り取り残渣の収穫適期をより正確に把握することで,実地試験に際し刈り取り残渣に含まれる結実種子量をさらに高め,実地試験において,より質の高い刈り取り残渣を供試可能となると考え,野外実地試験を研究開始時期を1年延期し,2年目に開始することとした。 なお,研究1年目には成果(学会発表や論文)が出ていない,堤防において残存する半自然草地の分布調査ならびにその分布を規定する要因調査についても,分布調査自体は予定通り実施しており,今後実施する土壌分析結果と照合することで,次年度には,残存する半自然草地の分布を規定する要因に関する成果が得られる見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
研究2年目にあたる平成27年度は,刈り取り残渣を用いた実地緑化試験を開始する。堤防における野外調査においては,当初計画通り土壌分析を進めることで研究結果をとりまとめ、成果報告を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初,研究1年目より刈り取り残渣を用いた実地緑化試験を実施する予定であったが,刈り取り残渣の収穫適期をより正確に把握することで,実地試験に際し刈り取り残渣に含まれる結実種子量をさらに高め,実地試験において,より質の高い刈り取り残渣を供試可能となると考え,野外実地試験を研究開始時期を1年延期し,2年目に開始することとした。
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次年度使用額の使用計画 |
研究1年目に予定していた緑化実地試験を研究2年目に実施することで,1年目に残った資金を消化する。
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