研究課題/領域番号 |
26450492
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山田 晋 東京大学, 農学生命科学研究科, 助教 (30450282)
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研究分担者 |
小柳 知代 東京学芸大学, 環境教育研究センター, 講師 (80634261)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | レストレーション / 土壌pH / 土壌有効態リン酸 / 草原生植物 / チガヤマット / チガヤ苗 / 刈り取り残渣 |
研究実績の概要 |
茨城県取手市付近の利根川河川堤防64地点を調査した。河川堤防に成立する草地植生は3つに分類された。G1はG2,G3より在来種数が多く,多くの草原生植物が生育した。G1はG2,G3よりも旧堤防が有意に多く存在し,土壌pHと有効態リン酸の値が有意に低かった。G2は在来種が優占したのに対し,G3は外来種の優占に特徴づけられた。戦後に堤防の改築が行われていない安定した土壌のもとで維持された堤防植生は,草原生植物の生育地として機能することがわかった。 堤防植生は堤防の治水機能に影響を及ぼす属性の一つであり,植生のなかで量的に多くを占める優占種が,築堤時の緑化工事の後に速やかに増加することは治水上とくに重要である。そこで河川堤防の主要な優占種である在来種のチガヤの導入手法について検討を行った。茨城県取手市の利根川高水敷の試験地において,マット,播種,セル苗,無施工の条件区を設置した。チガヤマットと高密度播種は,侵入する雑草種の被度と種数をともに制御した。もし河川堤防の安定と浸食防止が最優先とされるのであれば,マットと高密度播種によるチガヤ導入が最も効率的な技術となるだろう。マットによるチガヤ導入は,地下部のバイオマスを最大化した。このことは,マットによるチガヤ導入は,とりわけ優れた緑化方法であることを示す。一方,苗による導入は,短期間にはチガヤの単純群落を形成するには至らなかったことから,河川堤防への緑化手法としては不適であると考えられる。 刈り取り残渣を用いた植生復元を行う際に適切な残渣の厚さを明らかにするため,異なる厚さにおける植物個体の発芽状況を調査した。実験的に同量ずつ播種した種子からの発芽状況から,実際の植物群落の2倍以上すなわち800g/m2以上の厚さで刈り取り残渣を播いた場合,その後,刈り取り残渣から出芽した個体の数が抑制される種がほとんどであることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
河川堤防における植生調査については予定通り進み、現在、調査結果を投稿するための執筆中となっている。 刈り取り残渣の緑化事業実用化に向けた圃場試験については、当初予定より1年遅れた平成27年度に試験をスタートさせた。現在、経過観察を開始したところであり、このモニタリング自体は順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
河川堤防における植生調査については、在来植物の生育状況のみならず、帰化植物の分布状況についても、土壌化学性と深く関連することが示唆された(松崎ら, 2016)。帰化種の生育状況は在来植物の生育も左右する大きな要因となる。そこで、当初の調査時期(秋季)の植生調査では分布が不明であった主要外来種のネズミムギに注目し、その分布調査を初夏に実施する。刈り取り残渣に関する圃場試験については、モニタリングを進める。 得られた個別の研究結果は、順次、学術誌へ論文投稿を進める。 関係学会において当研究結果に基づいたフォーラムを開催し、研究成果の還元を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
圃場試験の実施を1シーズン遅らせたことに起因し、当該試験の成果報告にかかる学会発表の機会を次年度に持ち越したため。
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次年度使用額の使用計画 |
当初は平成27年度に予定していた圃場試験結果とりまとめにかかる費用を、平成28年度に持ち越して支出する。
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備考 |
東京大学附属生態調和農学機構のホームページ http://www.isas.a.u-tokyo.ac.jp/detail/index.php?id=155
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