研究課題/領域番号 |
26450494
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
村田 浩平 東海大学, 農学部, 准教授 (90279381)
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研究分担者 |
土屋 守正 東海大学, 理学部, 教授 (00188583)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 外来植物 / 随伴アリ / 共生 / オオルリシジミ / 希少昆虫 |
研究実績の概要 |
外来植物であるセイタカアワダチソウが進入しオオルリシジミの生息環境が悪化している阿蘇地域の生息地において実験区を設定し,節足動物相に関する調査を実施するとともに,これまでに得られた標本の同定とデータ化を進めている.また,本種と随伴アリとの種間関係の解明や,本種の生息環境の評価と復元にも取り組み,朝日新聞,熊本日日新聞,読売新聞,東海大学新聞など新聞掲載9件,TV放送1件など大きく取り上げられた. 研究成果の1部は,日本昆虫学会第74回大会において「オオルリシジミと随伴アリの種間関係ならびに九州北部豪雨が生息地に及ぼした影響」,「くじゅう・阿蘇地域におけるオオルリシジミの生息状況と保護活動」として発表した.また,第62回日本生態学会大会においては,研究成果の1部を「阿蘇地域におけるオオルリシジミ生息地の環境復元」として発表した.加えて,これまでの研究成果を総説としてまとめ,「オオルリシジミとアリの共生関係,くじゅう・阿蘇地域の保護活動」として昆虫と自然49(4)に掲載された. 2014年11月29日には,本研究に関連して,東海大学からシンポジウム開催に関する補助を受け「阿蘇地域の絶滅危惧生物の保全のための環境教育と地域連携」というタイトルで,東海大学阿蘇キャンパスにおいて公開シンポジウムを開催し,大会長を務めるとともに,「阿蘇地域の希少昆虫の保護とボランティア」について本研究の成果を含め話題提供を行った.また,総合討論においては,研究分担者である土屋守正教授もコメンテーターとして参加し,研究代表者は司会を務めた.さらに,オオルリシジミが生息する阿蘇地域の草原環境の評価に関するこれまでの研究成果と本研究の成果の1部をとりまとめ,学会誌に投稿中である. これらのことから,本研究は,予想を上回る水準で研究の遂行できていると評価している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成26年度は,申請書の研究実施計画に記載したセイタカアワダチソウが進入している阿蘇地域のオオルリシジミの生息地において実験区を設定し,調査を実施し,得られた標本の同定とデータ化を進めることができた.成果の一部は,学会発表3件,公開シンポジウムの開催における話題提供1件,総説1件の成果として公表することができた.なお,現在,投稿中論文1件,投稿準備中1件の状況である. したがって,本課題は,当初の計画を上回る成果をあげることができていると評価している.なお,これらの取り組みは,新聞掲載9件,TV放送1件として社会から評価されるに至っており,本研究の目標を達成していると考えている. 平成26年度の研究遂行が順調であり,高い達成度を示したことは,本研究課題の最終目標であるセイタカアワダチソウ除去によるオオルリシジミの生息地の環境復元について,一部の生息地で除去に実際に取り組み,その効果を見極めるためのモニタリング調査を実施することができたことからもわかる.この成果は,今後の研究を大いに発展させることにつながると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
セイタカアワダチソウが進入している阿蘇地域のオオルリシジミの生息地において最終年度まで継続する調査を継続するとともに,公表できる成果については,まとまり次第,日本昆虫学会大会,日本生態学会大会などで公表することとする.また,学会誌などでも公表していく予定である.なお,セイタカアワダチソウの除去によるオオルリシジミの生息地の環境復元につては,その効果を慎重に見極める必要があるため,モニタリング調査を継続していきたい. 研究実施計画についてであるが,交付申請書において平成27年度の計画に記載した外来植物の駆除方法開発に関する実験は,現在,実施準備を進めており,成果が得られる見込みである.しかしながら,TVなどでも報道されているように本研究における調査地がある阿蘇山は,現在,噴火活動が活発なため,火山活動がオオルリシジミやその生息環境に及ぼす影響を慎重に見極める必要がる. したがって,関係機関に飼育許可を申請して実施する予定であった本種の幼虫を用いた室内実験は,平成27年度は延期としたい.替わりに,同じ調査地において過去に調査し未分析であった草原の節足動物相に関する調査により得られた標本の製作,同定を進め,研究分担者である土屋守正教授による解析に重点をおいて実施していく予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画上,必要と見積もっていた人件費・謝金の350,000円の支出が,研究代表者自身が調査や分析に時間を割いた結果,研究遂行上の工夫で0円となったが,採集品の整理のための消耗品の購入費用が265,990円余分に必要となり差額の84,010円が次年度使用額となった.
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次年度使用額の使用計画 |
阿蘇火山の噴火がオオルリシジミやその生息環境に及ぼす影響を見極める必要があるため,次年度は,関係機関の許可を得て行う計画であった幼虫を採集しての飼育は見送る予定であるが,かわりに本調査結果結果と比較することを目的として実施する過去の調査により得られた節足動物の標本を製作するための費用がかさむことが予想される.よって,次年度は,この差額分を含め,標本製作用消耗品が計画よりも多く必要となる見込みであるので,その購入に充てたい.
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