研究課題/領域番号 |
26450495
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研究機関 | 南九州大学 |
研究代表者 |
竹内 真一 南九州大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (30268817)
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研究分担者 |
飯田 真一 国立研究開発法人 森林総合研究所, その他部局等, 研究員 (70375434)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 移植 / 樹液流動 / 樹液流速 / キャリブレーション / 根鉢秤量法 |
研究実績の概要 |
本研究は自然木や造園木を対象に樹幹の放射方向に詳細な速度分布が把握できる樹液流測定法であるHFD法を用いて、枝の剪定や根の切断など移植作業などが、この速度分布情報が示す知見を明らかにすることを目的として実施している。平成27年度は前年度に引き続き、HFD法を造園木として、タイサンボク、カラタネオガタマ、シダレモミジ、自然木としてスギに適用し、汎用型のグラニエ法やヒートレシオ法との樹液流測定に関する比較検討を行った。①移植後4年目のタイサンボクの移植個体を対象に,ヒートパルス速度をヒートレシオ法により連続測定し、過去の測定結果を取り纏めた。移植直前の個体葉面積と移植後4年目の落葉葉面積がほぼ等しいことから、調査個体の葉量は増大した。さらに、土壌断面調査により顕著な根系伸張が観察され、地下部の拡大が確認された。ヒートパルス速度から推定される樹液流動は、経年的に順調に増加し、3年目から適用したグラニエ法の樹液流速の測定結果からも流れの増加は支持された。また、樹幹内の流速分布は時間経過とともに外側が内側の流れを卓越する結果が得られた。経年的な樹液流動の増加と樹幹内の流速分布の変化は計測個体の拡大と調和しており、移植後の活着状況を判定するツールとして樹液流動の計測が有効であることが明らかとなった。②樹液流量の定量評価を目的として、シダレモミジの調査個体を対象に、ヒートレシオ法により測定したヒートパルス速度と蒸散量を比較した。樹体への損傷を極力抑えるように根鉢を掘り取り、大型天秤上で重量変化を測定する秤量法により蒸散量を評価し,この方法を根鉢秤量法と定義した。その結果、4ヶ月という長期間に渡り良好な線形関係が存在し、両者の回帰式で10%の精度で蒸散量が算定可能であることが示された。一方、プローブの挿入直後は一時的に高いヒートパルス速度が検出され、その期間は6~24日と変動した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
代表者・分担者ともに当初の樹液流測定を順調に行っており、共同研究者以外の関連分野の研究者との研究交流もそれぞれ密に行い、その都度課題を明らかにしている。特に森林学会において、樹液流測定の問題点に関するシンポジウムに、招待講演者として参加し、本科研の成果を発表し関連情報を共有した。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度はカラタネオガタマの移植後の活着検討時期である。また、移植後5年目となるタイサンボクは樹枝剪定や根群切断を適時行いながら、その作業が樹液流に及ぼす影響について明確化する。さらにスギ、ヒノキの根鉢秤量法によるキャリブレーションも実施する。本研究の特色は、樹木の移植や管理作業に対する植物の反応を科学的にアプローチすることであり、“樹液流の流れ”という現場管理者にも理解しやすい指標を用いて解明する点にある。これを明示することによりどの程度の流れを確保すれば、その作業内容が効果を発揮するか否かの判定を試みることを研究の着想としているため、取り纏めの最終年である本年に現場の技術者の意向調査も実施したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度内予算使い切りを前提に実施していた物品購入作業において,想定額(見積もり)よりも低価格で物品が納入されたため。
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次年度使用額の使用計画 |
貴重な予算を有効活用し,最終年度の実験を遂行するための消耗品に充て,論文の取りまとめに資するデータを収集する。
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