研究課題/領域番号 |
26450497
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研究機関 | 国立研究開発法人森林総合研究所 |
研究代表者 |
齋藤 和彦 国立研究開発法人森林総合研究所, 関西支所, グループ長 (20353691)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 沖縄 / やんばる / 国頭村 / 森林利用 / 歴史 |
研究実績の概要 |
今年度は、1960年代の林班図(1/6,000)に描かれた歩道を中心に現地踏査を行った。国頭村(くにがみそん)域の1960年代の林班図は、幾つかの図葉が失われていて完全ではないが、現在の林班図には描かれていない戦前開設の林道や、整備時期不明の古い歩道が描かれており、他にはない貴重さがある。ただ、そのことが逆に位置合わせを困難にし、これまで利用されてこなかった。今回は、オルソ化した終戦前後と1962年の米軍撮影空中写真を用いて、この林班図の歪みを取りつつ位置合わせし、GNSSを用いた現地踏査で、GISに表示しながらの道案内に使えるレベルにした。 結果、谷部を通る歩道沿いに炭窯遺構が高密度に分布する領域を字奥間(おくま)で発見した。同じような炭窯遺構の分布パターンは、字奥(おく)でも確認されており、炭窯遺構と谷沿いの歩道との密接な関係が示唆された。今回見つけた字奥間の炭窯遺構の一つは、天井がほぼ完全に残っていた。炭窯遺構は、天井が落ちた状態で見つかるのが普通なので、この遺構の発見は極めて貴重である。今後、聞取調査等で、この遺構の構築年代がわかれば、沖縄における築窯製炭の技術史研究に繋がる。 この他、新たな資料として、字比地(ひじ)の戦前の林班図を発見した。沖縄では、1908(M41)年から村単位で村有林の施業案(現在の森林計画に相当)が作成されたが、沖縄の村有林は字有林的な性格を持つため上手く機能せず、1916(T5)年から字単位の施業要領(=簡易施業案)に変更して村有林の利用秩序を回復したとされる。このことは、これまで文字史料で知られていたが、その字単位の林班図が発見されたのは、国頭村で初めてである。また、この林班図から、現在、国立公園の第一種特別保護区になっている比地川上流域の谷に戦前の人工林が点在していたことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度、個人的事情から古道踏査に遅れが生じ、今年度、挽回しようとしたが、他の研究プロジェクトとの関係で挽回しきれなかった。
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今後の研究の推進方策 |
各種資料や聞取調査をもとに現地踏査を行い、開墾や歩道の痕跡をGPSで記録し、その結果を終戦直後の空中写真と照合する。また、文献調査を行い、それらの遺構が登場した社会経済的背景を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、ハブの活動が活発な春から秋にも現地踏査を行う予定だったが、他の研究プロジェクトとの関係で日数を充てられなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
現地踏査と今年度発見した字比地(ひじ)の林班図の分析のために研究期間を一年延長する。そのために用いる。
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