研究課題/領域番号 |
26450499
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
兼森 芳紀 筑波大学, 生命環境系, 助教 (40529088)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 精子形成 / 受精 / 先体 / マウス |
研究実績の概要 |
ほぼ全ての動物種の精子頭部には、先体(アクロソーム)とよばれる特殊な細胞小器官がある。先体にはさまざまなタンパク質分解酵素が含まれており、受精での精子の卵子卵丘細胞層や透明帯の通過を助けるはたらきをもつ。 ACRBPは、セリンプロテアーゼAcrosinと結合する先体タンパク質である。マウスの場合、ACRBPには選択的スプライシングによる2種のバリアントが存在し、それらは球状精細胞から先体胞内の先体顆粒に局在している。我々は最近、ACRBPの欠損マウスを作製・解析したところ、先体特有の構造物acroplaxomeが異常であることを見出した。そこで、本研究ではACRBPを介したアクチン細胞骨格構造の分子メカニズムを明らかにすることを目的とした。 平成26年度の研究実績は、以下の2点である。 ① アクチンフィラメントを特異的に認識するペプチド(Lifeact)を発現するプラスミドを作製した。プラスミドには蛍光タンパク質のGFPを融合させ、発現した細胞でライブイメージングを可能した。導入した培養細胞では、既知のアクチンマーカーであるファロイジンとGFP-Lifeactシグナルとの共染色が観察された。 ② マウス精巣切片を生体外培養し、先体形成の様子を観察した。先体形成マーカーとして現有のGFP-ACRBPトランスジェニックマウスを利用し、実験の簡便化を図った。若齢マウスの精巣断片を培養したところ、先体形成は一部の球状精細胞で確認されが、より分化の進んだ伸長精細胞ではほとんどみられなかった。同時に、精細胞での先体形成の割合を数値化するため、フローサイトメトリーを用いたGFPシグナルを測定した。これらの結果から、現状の生体外での実験システムでは、先体形成をモニターすることが困難であることが判明した。今後の条件検討が望まれる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度は、ほぼ予定した計画通りに実験が進んだ。さらに、得られた研究成果の一部を海外学会と国内学会で発表できた。
|
今後の研究の推進方策 |
平成27年度の実験計画は、以下の2点に絞り進めていく。 ① Lifeactマウスの作製 平成26年度で作製したLifeact-GFPのプラスミドを受精卵に導入し、トランスジェニックマウスを作製する。Lifeactマウスの精巣切片を用いて、精子先体形成でのアクチン細胞骨格を共焦点レーザー顕微鏡で観察する。得られたイメージ画像をもとに3次元構築や数値化させた後に立体シミュレーション解析も行う。 ② ACRBPに結合する細胞骨格関連因子の同定 新規ACRBP結合因子を同定するため、精巣抽出液を用いて抗ACRBP抗体で免疫沈降後、共沈物をLC/MS/MSで解析する。同定した因子の抗体を作製後、精細胞での発現や局在を調べる。さらに、結合実験によりACRBPとアクチンとの関係性を明らかにする。ACRBP結合因子が同定できない場合、ACRBP欠損と野生型の精巣で存在量が変化するタンパク質を網羅的に調べる。精巣抽出液を用いてLC/MS/MS解析し、ACRBPの欠損により存在量が変化している因子を同定する。このLC/MS/MSは定量解析を行うため、同位元素を巧妙に組み合わせたIsobaricTagを用いる(iTRAQ法)。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度に予定計上していた消耗品の費用が予想より少なかったため。特にクロマトグラフィーに用いるカラムの購入を見送った。また、遺伝子改変マウスの作製費と維持費を大幅に削減した。
|
次年度使用額の使用計画 |
差引額分は、平成27年度のマウスやカラムの購入に使用する予定である。
|