研究実績の概要 |
前年度に作成した、ジャガイモの塊茎形成制御に関わるフロリゲン複合体の構成要素候補のFDホモログ (StFD, StFDL1a, StFDL1b)やTFL1ホモログの過剰発現体やRNAi発現抑制体の表現型解析を行った。その結果、3種類のFDホモログの過剰発現体では、非形質転換対と比較して塊茎形成時期に違いは観察されなかった。発現解析では3つのFDの発現量はストロン(地下茎)分化の過程で大きく変化しないことから、FDは恒常的に十分量発現しており、その発現量の上昇が塊茎形成促進に必須ではないことが示唆された。RNAi発現抑制体の解析では、トマトの花成促進にかかわるSPGBのオーソログと考えられるジャガイモFDホモログStFDのRNAiは塊茎形成時期に影響しなかったのとは対照的に、StFDL1a/bのRNAiでは有意な塊茎形成遅延が観察された。これは、転写因子の置換によってフロリゲン複合体の標的が変化するという作業仮説を支持している。TFL1ホモログについて、前年度に作成した過剰発現体やRNAiによる発現抑制体の表現型解析を行った。4つのTFL1(StSP, StBFT1, StBFT2, StSP9D)の過剰発現体は長日条件において、いずれも塊茎形成時期の遅延が観察された。発現解析から、4つのTFL1のうち、StSP, StBFT1がストロンで強く発現していた。そこで、StSP, StBFT1のRNAi発現抑制体の表現型解析を行ったところ、長日条件において有意な塊茎形成促進が観察された。実験スペースをとらず観察が容易な試験管内での塊茎誘導アッセイ系を用いて塊茎形成能を評価したところ、同様に、長日条件において塊茎形成促進が観察された。
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