最終年度は、これまでに作成した形質転換体の詳細な表現型解析を行なった。これまでの塊茎形成時期の解析は、主に植物育成室を用いて、非誘導条件である長日条件での塊茎誘導時期を調査していた。その理由は、多数の形質転換植物の栽培・表現型調査に広い育成スペースが必要であったからである。そのため、本来の塊茎誘導条件である短日条件での塊茎形成解析は遅れていた。そこで最終年度は、2台の植物グロースチャンバーを確保し、そこで強い塊茎誘導条件である短日条件を設定し、導入遺伝子の発現が安定している形質転換株について塊茎誘導時期を調べた。その結果、コントロールである野生型植物およびGFP過剰発現植物では、これまでの予備実験と同様に、すべて土移植後4週間で塊茎形成が観察された。ジャガイモの4つのTFL1の過剰発現体のうち、3つの過剰発現体においては、6週間目以降に塊茎形成が観察され、有意に塊茎形成時期が遅れた。対照的に、それらの14-3-3相互作用領域に変異を導入した過剰発現体においては、土移植後4週間で塊茎形成が観察され、有意な遅れは観察されなかった。以上から、少なくとも3つのTFL1が14-3-3相互作用依存的に塊茎抑制に働いていることが示唆された。この結果は、フロリゲン・アンチフロリゲンのバランスによる発生制御モデルを支持するものと考えている。これまでに得られていたStSP6Aによる塊茎誘導とその14-3-3相互作用依存性、StFDL1ノックダウンによる塊茎形成遅延、StSP6Aと14-3-3とStFDL1の組織・時期特異的RNA発現やタンパク質の細胞内局在および相互作用の結果をあわせて、その成果を論文公表した。
|