研究課題
葉緑体から核へのシグナル(レトログレードシグナル)伝達は迅速な光酸化的ストレス応答に重要であるが、その詳細は不明な点が多い。本研究ではシロイヌナズナの熱ショック転写因子A1d(HsfA1d)を介した光酸化的ストレス応答に関わるレトログレードシグナルの分子機構を明らかにするため、12-オキソフィトジエン酸(OPDA)に着目し研究を行った。しかしながらこれまでの解析により強光によるApx2やHsfA2の誘導(短くとも1時間以内)にはOPDAを含めたオキシリピン類は関与していない事が示唆された。そこで前年度はOPDAを含めたオキシリピン類が関与する強光応答遺伝子をRNA-seqにより検索した。その結果239遺伝子が得られ、これらの中にはJRG21、VSP1、RAP2.6、PDF1.2など植物ホルモンであり、かつオキシリピン類であるジャスモン酸により誘導を受ける遺伝子が多く見られた。そこで本年度はJRG21、VSP1、RAP2.6、PDF1.2に着目し、これらのオキシリピン応答性およびそのシグナル伝達機構について解析した。その結果、VSP1およびPDF1.2の転写レベルはJA処理により誘導され、オキシリピン類である2-ヘキサナール(2-Hex)によっても誘導を受けた。JRG21の転写レベルはJAおよび2-Hex処理により大きく変化しなかった。RAP2.6の転写レベルはJAおよび2-Hex処理により低下した。TGA2、TGA5、TGA6はOPDAを介した遺伝子発現制御に関わるロイシンジッパー型転写因子である。そこで2-Hex処理によるVSP1およびPDF1.2もまたこれらの転写因子により発現制御を受けているかを解析するためにtga256変異体を用いて解析した。その結果、両遺伝子の転写レベルの2-Hexによる誘導は抑制された。
すべて 2016
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Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry
巻: 80 ページ: 1254-1263
10.1080/09168451.2016.1176515