研究課題/領域番号 |
26450504
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
赤間 一仁 島根大学, 生物資源科学部, 教授 (50252896)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | GABA / グルタミン酸脱炭酸酵素 / GABAアミノ基転移酵素 / グリオキシル酸還元酵素 / ストレス / 光呼吸 |
研究実績の概要 |
γ-アミノ酪酸 (GABA) は様々なストレスに応答して細胞内に蓄積する。本研究ではイネにおいて、ストレスに応答した細胞内GABA含量の調節機構とGABA経路の多様な生理機能を解明することを目的とする。平成26年度においてはGABA代謝系の2種の遺伝子(GABAアミノ基転移酵素[GABA-T]とグリオキシル酸還元酵素[GLYR])の細胞内での異所的な過剰発現を誘導したイネの作出を以下の手順で行った。 (1)ベクターの構築:TiプラスミドベクターのT-DNA上にCaMV 35Sプロモーターとターミネーターの間に、GABA-Tアイソフォームの中で最も活性が高いGABA-T1の完全長cDNAを組み込んだもの(ミトコンドリア移行型)、N末の移行シグナルを葉緑体で働くRecA相同タンパク質のものに置換したもの(葉緑体移行型)、移行シグナルを除いたもの(細胞質型)を組み込んだ。これに加えて、二つのイネGLYR遺伝子(一つは細胞質局在、もう一つはミトコンドリアと葉緑体局在)をそれぞれ同様に組み込んだ。 (2)イネ形質転換:これら5種類に植物発現プラスミドをアグロバクテリウム株EHA105に導入して、定法に従いイネカルスに感染させ、ハイグロマイシンで選抜した。再分化個体は土に移植後約3ヶ月でT1種子を得た(少なくとも5系統をそれぞれ確立した)。次世代の植物体を生育させて、CTAB法で植物DNAを抽出し、定量PCRにより導入遺伝子のコピー数を求め、ホモ系統の選抜を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度においては植物形質転換ベクターの構築とイネ形質転換の実施を研究実施計画とした。研究に必要な5種類のベクターは予定通りに作製し、イネ形質転換実験に供した。最終的にベクター毎に少なくとも5系統の組換えイネを作出することができた。また、次世代の成長したイネから個体毎に植物DNAを抽出して定量PCRを行い、コピー数の推定とホモ系統の選抜を終了した。よって、平成27年度においてはホモ系統を育成してストレス応答試験のための十分量の種子の確保を進めることが可能になった。
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今後の研究の推進方策 |
確立した5種類のホモ系統形質転換イネの以下基盤的な解析を行う。すなわち、①発育ステージや組織部位ごとに全RNAを抽出して、qRT-PCRによる発現量の定量を行う。②細胞内でのタンパク質発現部位の確認を細胞質、ミトコンドリア、葉緑体分画からタンパク質を単離して、特異抗体を用いたウエスタン解析を行う。③同時にGABA-TとGLYRの活性測定を行う。④これらの過剰発現により細胞内のGABA、代謝されうるアルデヒド(コハク酸セミナルデヒドやグリオキシル酸)の含量をガスクロマトグラフィー質量分析計 (GC-MS) で定量分析する。 これと平行してホモ系統イネを用いたストレス耐性試験を進める。まず、現有のグロースチャンバーとプレハブ型の恒温室で再現性のあるストレス実験系の確立を目指す。非生物的ストレスとして、冠水・低温・高温・強光・乾燥・高塩・高浸透圧を検討し、野生型イネ(日本晴)との生育の比較から、光合成速度やバイオマスを含めた生育特性を比較する。 最終年度においてはストレス耐性試験を進め、GABA代謝系統遺伝子群の動態、代謝産物の網羅的な解析やRNA-Seq解析によって、ストレス耐性が付与されたイネ系統の分子レベルの解析からGABA代謝系の機能解明に迫る。これに加えて、カルモジュリン結合能を欠いた、イネにユニークなグルタミン酸脱炭酸酵素 (GAD2) の機能を主に複合体形成への関与の側面から明らかにする。
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