研究課題/領域番号 |
26450506
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研究機関 | 金沢工業大学 |
研究代表者 |
佐野 元昭 金沢工業大学, バイオ・化学部, 准教授 (80410299)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | トランスポーター / パーミアーゼ / 麹菌 / 遺伝子破壊 |
研究実績の概要 |
麹菌ゲノムデータベースでアミノ酸トランスポーターと予測されている76遺伝子について、アミノ酸レベルでの相同性でクラス分けを行った。その後、他の生物種との相同性の比較し、ホモロジー解析・系統樹解析等により機能予測を行った。この解析により、データベース上でアミノ酸トランスポーターと推測された遺伝子がどのアミノ酸の取り込みに関わっているか推定を行い、遺伝子破壊株作製の候補とした。このような解析により、麹菌は近縁種と比較して、余分なアミノ酸トランスポーター遺伝子を有するという情報が得られた。 遺伝子破壊作製については、メチオニン、アルギニン、リジン、機能未知のアミノ酸トランスポーター等約20株の遺伝子破壊株の作製を行い、そのトランスポーターが主に取り込むアミノ酸について解析を進めた。また、トランスポーター遺伝子破壊の結果、致死性になる場合に備え、発現制御が可能なプロモーターを利用した解析の準備を進めた。 昨年度に続き今年度も、窒素化合物の添加により生産が抑制される二次代謝産物の特定をすすめ、窒素源の取り込みの制御による二次代謝産物大量生産のための基盤データ取得を進めた。今年度はリジンの取り込みを制御することにより、抗生物質アンピシリンの大量生産を試みた。まず、リジンの取り込みにかかわるトランスポーター遺伝子を破壊したところ、リジン存在下でもアンピシリン生合成遺伝子の発現量上昇が確認された。 これらの解析で得られた情報は、麹菌におけるトランスポーター改変による二次代謝産物の大量生産のための基礎情報となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
トランスポーター遺伝子破壊株の作製に関しては、本年度も約20株の遺伝子破壊株を作製し、当初の予定通りに進行している。更に、発現制御が可能なプロモーターを利用した解析については、まだ準備を進めている段階ではあるがおおむね予定通りである。 来年度に予定していた麹菌で得られた解析情報を、近縁種に応用可能であるかについての検討を既に行っている。現在、日本固有の麹で国菌にも指定されているが、遺伝的な解析があまり進展していない白麹菌への応用を目指し、遺伝子破壊を効率的に作製するための形質転換系の構築などを行っている。この点については当初の計画以上に進展をしている。 窒素化合物で抑制される麹菌の遺伝子の特定に関しては、一部のアミノ酸を添加した場合に抑制される遺伝子ついてのデータ取得は行えたが、DNAマイクロアレイ解析の実験手法の確立に手間取ったため遅れが生じている。それに伴い、麹菌における、窒素源の取り込みの制御による二次代謝産物大量生産のための基盤データの取得も若干の遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
麹菌において、特定のアミノ酸が培地中に存在すると生産抑制をうける二次代謝産物の同定を行う。次に、その二次代謝産物の生産抑制の原因となるアミノ酸の取り込みにかかわるトランスポーター遺伝子破壊株を活用することで、二次代謝産物の大量生産を目指す。このような解析により、麹菌で窒素源取り込み制御による二次代謝産物の大量生産を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
DNAマイクロアレイ解析の実験手法の確立に手間取ったためと、DNAマイクロアレイ解析用プローブ作製試薬の供給に遅延が生じたため、アレイ解析にかかる費用が次年度使用額として生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
DNAマイクロアレイ解析の実験手法も確立し、DNAマイクロアレイ解析用プローブ作製試薬の供給も安定的に供給されるようになったため、平成28年度前半に多くのアレイ解析を行い、それに応じて試薬の購入を進めて行く予定である。
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