研究課題/領域番号 |
26460003
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
杉本 健士 富山大学, 医学薬学研究部(薬学), 准教授 (60400264)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | CJ-12,950 / 不斉合成 / マクロラクトン / 閉環メタセシス / 構造解明 |
研究実績の概要 |
本計画の初年度となる平成26年度は、想定されるCJ-12,950の各種ジアステレオマーのうちの一つを立体選択的に構築する合成経路の開拓を目標に、CJ-12,950を2つのキラルフラグメントおよびオキシムエーテル側鎖を持つcis-エナミド側鎖に逆合成し研究を進めた。その結果、シャープレスの不斉エポキシ化、ケックの不斉アリル化、ジェイコブセンのエポキシド不斉開環反応等を用いて、CJ-12,950の合成に必要な二つのキラルフラグメントを立体選択的に構築する経路を確立することができた。さらに、得られたこれらのフラグメントをエステル交換反応によって結合し、グラブスの閉環メタセシス反応を行うことでCJ-12,950の大きな特徴となるマクロラクトン骨格の構築を試みた。条件最適化の結果、70%程度の収率にて目的とするマクロラクトンを与える条件を見いだすことができた。続いて、m-CPBAを用いた単純な酸化条件によってマクロラクトン上の二つのオレフィンのうち、所望のオレフィンを化学選択的および立体選択的にエポキシ化できることを見いだした。成績体のエポキシドに関する立体化学については未解明のままとなっているが、最後のフラグメントとなるエナミド側鎖の導入に必要なヨウ化ビニル基の構築には高井―内本オレフィン化の条件を適用し、trans-ヨウ化ビニル部位の立体選択的な構築に成功した。これと並行してオキシムエーテル側鎖を有するcis-エナミド側鎖の立体選択的な構築法について検討を行い、収率こそ低いものの、目的のcis配置をもつエナミド側鎖を高い立体選択性にて得られる方法を確立している。現在、銅触媒を用いたカップリング反応によるエナミド側鎖の導入について検討を行っているところであり、想定化合物の全合成達成まで、残すところあと二工程まで迫っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
想定しているCJ-12,950の合成まで、あと二段階まで迫っているが、当初の初年度の計画である全合成の完了には至っていないため、本年度の達成度は9割程度と考えている。これまでに、二つのキラルフラグメントについては、収率には改善の余地を残すものの両エナンチオマーおよび対応するジアステレオマー群について、立体選択的に調製する目処はついている。またマクロラクトン上のエポキシドの立体化学についても、ヒドロキシ基を足がかりとして結晶性誘導体へ導くことができており、測定に適した単結晶を得ることで、X線結晶構造解析によってその絶対立体配置を確実に決定できるものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
想定したCJ-12,950の全合成には、ヨウ化ビニルを足がかりとしたアミド化と脱保護の二段階を残すのみとなった。今後の最優先課題は、これらの反応を進行させる条件を見いだすことである。最終成績体の機器分析データを、単離文献のそれと比較し、構造の確認を行う。天然物の機器分析データと良い一致が見られれば、各工程の収率向上を含めたブラッシュアップを行い、構造確定を行った旨、公表する予定である。機器分析データと一致しなければ、考えられるジアステレオマーを合成し、CJ-12,950の真の構造を速やかに明らかとする。また、合成した多様なジアステレオマーに関しても生理活性試験を行って、ファルマコフォアの探索を行い、これを基盤として、さらに活性の高い化合物の探索を目指した人工誘導体の合成を進める予定である。
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