昨年度まで行っていたZ型配位子に官能基を導入した錯体のX線結晶構造解析を、従来のZ型配位子含有金策体のものと比較しところ、当初予定していた金に隣接するホウ素原子が、金の電子を受容する効果に加えてホウ素イプソ位の炭素上のπ*軌道が金の電子を受容するη2型のZ-ligand effectを新たに見出すことができた。また、合成したその錯体を用いた触媒反応によるイン-ジオール体の連続的分子内環化反応により、ジアザビシクロ[3.2.2]誘導体の合成に利用できることを明らかにした。本法では、通常合成が困難な7員環構築を含む環化体の合成が効率的に行える点で大きな特徴を有する。このように、官能基を導入したZ型配位子を有する遷移金属錯体を用いることにより、新たな反応場を形成することができた。更に、昨年度まで検討していたプロパルギルアミン誘導体のカルボキシル化反応においても、合成した官能基を導入したZ型配位子を有する遷移金属錯体において極めて良好な触媒効果を示し、空気中室温下にて目的のオキサゾリジノン誘導体を高収率で合成できることを見出した。空気中の二酸化炭素はわずか0.04vol%しか含まれていないが、室温で効率的にC1ユニットとして利用できており、今後、空気中二酸化炭素の有効活用を考えた際、最も有功な手段の一つとなると期待される。また、触媒設計を更に工夫することにより、反応性の向上も見込めるため、これからの二酸化炭素研究においても、本錯体の重要性が益々高まることが考えられる。
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