1)C-N軸性不斉エノラートを経由する不斉反応を活用する,抗腫瘍活性天然物アルテミシジンの全合成を計画した。初めに、鍵となるアミノ酸誘導体の C-N 軸性不斉エノラートを経由するα-アリール化反応の開発を行った。アミノ酸としてバリンのベンジルエステルを基質として用い求電子剤としてベンザインを反応させた。条件検討初期では,複雑な混合物を与えるだけであったが、ベンザインの発生法などの条件を精査することで,所望のα-アリール体が 52% 収率,95% ee で得られることを見いだした。現在、全合成に向けて合成ルートの開発を展開している。またこのとき,アミノ酸誘導体にベンジルエステルを利用すると,C-N 軸性不斉エノラートのラセミ化半減期が延長するという興味深い現象を発見することが出来た。そこで、この点に興味を持ち医薬品になる化合物に多く含まれるフッ素原子の高エナンチオ選択的導入が可能になると考えて研究を展開している。 2)C-O 軸性不斉エノラートを経由する不斉反応を用いたエピリオリド及びその水和物の合成に着手した。しかし,鍵反応の基質合成が困難であり、別ルートによる合成も検討している。別ルートにおける鍵反応は合成終盤における不斉カルベン触媒による分子内環化とエポキシドに対する位置選択的アセチレン導入反応で、現在、種々のルイス酸及び添加剤を用いて位置選択的アセチレン導入反応について条件検討を行っている。
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