研究課題/領域番号 |
26460008
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
澤田 大介 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (00338691)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 有機合成化学 / 反応場 / 水中反応 / 多段階反応 |
研究実績の概要 |
本年度は反応場の概念の確立を念頭に基礎的なデータ収集実験に着手した。題材として、種々検討した結果、予備的な実験結果を持っていたDarzen反応、Mannich反応を用いて実験を進めた。可溶性ポリマーとして、ポリエチレングリコールを始めとした20種類を用いた。特にポリエチレングリコールは、多種の分子量を既製品として幅広く手に入れることができるため、これらを用いて分子量と使用する重量が反応場の形質に与える影響を網羅的に調査した。 溶媒としては主に水を用いて、分子量が溶媒に可溶範囲である数万までのものを使用して検討したところ、分子量が反応場の形成に与える影響は少なく、使用する重量は反応場の形成に大きく影響を与えることが分かった。続いて、ポリエチレングリコール以外の可溶性ポリマーを用いて検討した。ここではポリマーの化学的な性質と反応場の形状との相関を網羅的に調査した。予想に反して、反応場の形状はポリマーの化学的な性質、構造に加えてポリマーの形質の差異が大きく影響することが分かった。例としてポリスチレンは、粒状のものを一度、有機溶媒に溶解した後に固化し、アモルファス状にすることによって、反応場として機能しうることが分かった。また、反応場の形質の差異が水中における有機物の反応の進行に大きく影響することが明らかとなった。全体的にはMannich反応において、イミン形成後の求核剤の反応性が大きく反応の収率に影響することから、種々の求核剤を用いて検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
反応場の概念の確立を念頭に基礎的なデータ収集実験を、Darzen反応、Mannich反応を題材として進めた。可溶性ポリマーとして、ポリエチレングリコールを始めとした20種類を用い、これらを用いて分子量と使用する重量、及びポリマーの化学的な性質が反応場の形状に与える影響を網羅的に調査した。その結果、予想外の知見が得られたため、その原理を追求した基礎的な実験を行った。具体的には、反応場の形状はポリマーの化学的な性質、構造に加えてポリマーの形質の差異が大きく影響することが分かった。上記の経緯により、本年度予定していた多段階反応への展開がやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度はこれまでに明らかになった可溶性ポリマーと反応場の形質の相関を基に、積極的に基質のアレンジを行う。例えば、Mannich反応では、アルデヒドとして水系溶媒中での反応である利点を活かしアセトアルデヒドやホルムアルデヒドを、更にアミン、求核剤も幅広く検討し、基質と反応性の関連を精査する。また、Darzen反応や遷移金属を用いた反応等、種々の反応にも適応を試みる。その中で十分な反応性が得られるものについて、多段階反応への応用を試みる。その際、汎用性のある多段階反応の実現が主題であるので、既存の反応場として用いられる界面活性剤などとの差別化を意識しつつ、反応を選別する。その後は具体的な合成目的物を設定して、反応場を利用した多段階反応による全合成へと展開したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
上記に記したように、本年度は予想外の課題が見つかったため、基礎的なデータ収集実験を中心に行った。その結果、研究用消耗品、実験用試薬の使用が限定的であり、既存の実験用試薬等を使用することができたため、申請額よりも少額の予算執行であった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は環太平洋国際科学会議Pacifichem2015に出席、発表を予定しており、その費用を計上した。また、研究用消耗品購入、実験用試薬購入に使用する予定である。
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