研究実績の概要 |
筆者は、エナミンとアルデヒド(もしくはイミン)とトリクロロシランからアミノアルコールやジアミンを合成する方法を見出した。さらに、この過程でN-トシルイミンとエナミンが速やかにエン型反応することを見出した。これを契機に本申請研究では、「1.エナミンとイミンとのエン型反応を利用する1,3-ジアミンの立体選択的合成法の開発」「2.エナミンと他の親電子剤とのエン型反応への展開」「3.アザ-エナミンへの拡張による1,2-ジアミンやアミノ酸合成への展開」を目指している。前年度は、1について学術論文を発表することができ、2について端緒を得ることができた。今年度は、以下の成果を得た。 (1)N-トシルイソシアナートとエナミンとのエン型反応生成物に、ワンポットで酢酸およびNaBH3CNを作用させたところ、良好な収率および高いcis選択性でβ-アミノ酸誘導体を合成できた。一方、N-トシルイソシアナートとトリクロロシランにエナミンを作用させると、中程度の収率ではあるが、trans体のβ-アミノ酸誘導体のみを合成できることを見出した。 (2)エナミンとのエン型反応について、ある種の環状イミンが鎖状のN-トシルイミンとは異なる立体選択性で進行することを見出した。すなわち、環状イミンとエナミンとのエン型反応生成物を、酢酸存在下NaBH3CNで還元したところ、結晶性の生成物を得ることができ、そのX線結晶構造解析によりエン型反応がsyn選択的に進行していることが分かった。 (3)アザ-エナミンとして1-(tert-ブチル)-2-メチリデンヒドラジンを用いてN-トシルイミンとの反応を試みたところ、エン型反応生成物が良好な収率で得られることを見出した。また、アルキリデンヒドラジンとの反応では、まだ低収率ではあるものの良好なジアステレオ選択性でエン型反応生成物が得られることが分かった。
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