研究課題/領域番号 |
26460015
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研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
矢内 光 東京薬科大学, 薬学部, 講師 (10408685)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 有機化学 / シリルアセタール / ナフタレン / ブレンステッド酸 |
研究実績の概要 |
シリルアルキルアセタールは,通常のジアルキルアセタールとは異なった反応性を示すことが期待できる。しかし,こうしたシリルアセタールを合成する手法が欠如していることから,この官能基の特異性やその選択的な活性化を活用した合成反応の開発は,大きく立ち遅れていた。研究代表者は,近年,独自に開発した酸触媒を駆使することで,ラクトンに対するケテンシリルアセタールの付加反応が円滑に進行することを見いだした。本研究では,この成果を踏まえて,まずは様々なタイプの環状シリルアセタールを合成する。次いで,得られたシリルアセタール化合物をフッ化物イオンなどで処理し,ケイ素-酸素結合の切断反応やその他のシリルアセタールに特異的な活性化を引き金とする新規カスケード反応(連続反応)の実現を図る。 本年度は,まず,独自に開発した酸性双性イオンを触媒とするケテンシリルアセタールのラクトンに対する付加反応を精査し,本反応が多彩な分子構造をもつラクトンに広く適用可能であることを見いだした。 イソクマリン類から合成したシリルアセタール化合物に関し,カスケード反応への適用も進め,3つのユニークな反応が進行することを見いだした。すなわち,4-アリールイソクマリンから得たシリルアセタールは,フッ化物イオン処理による脱シリル化を引き金としてジヒドロピラン環の開環と続く分子内アルドール縮合が進行し,四置換ナフタレンを収率よく与えた。また,4-アルキニルイソクマリンから得たシリルアセタールでは,脱シリル化を伴う開環反応と,続く分子内Michael反応が進行した。さらに,精巧に設計した4-アルキニルイソクマリン由来のシリルアセタールを用いれば,多環式芳香族化合物が中程度の収率ながら得られることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究では,研究計画段階で想定した新規カスケード反応の多くが既に実現できており,現在,個々の反応について基質の適用範囲を調べている段階である。例えば,4-アリールイソクマリンから得たシリルアセタールからの四置換ナフタレン合成は位置異性体の副生無しに目的とするナフタレンを与えた。本反応の成功は,より複雑な多環式芳香族化合物の合成に向けた新規カスケード反応の開発に弾みをつけるものである。また,4-クロロイソクマリンを酸処理すると置換基の転位を伴うナフトジオールの生成が円滑に進むことを見いだし,反応条件の最適化については検討を終えている。 以上の成果は,従来法では合成しにくい多置換ナフタレンの合成において,申請者の合成アプローチの有用性を実証するものであり,研究は想定以上に速く進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究成果を踏まえると,研究の更なる進展が期待できることから,研究成果を踏まえつつ,さらに精緻な反応基質の設計を進め,一般に選択的な合成が難しいとされている多環式芳香族化合物の効果的に合成につなげる予定である。同時に,これまでに見いだしたカスケード反応については,基質の適用範囲を明確にし,生物活性天然物の合成などへと展開を図っていく。
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