研究課題/領域番号 |
26460016
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研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
阿部 秀樹 東京薬科大学, 生命科学部, 准教授 (00328551)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | curcusone / ワインレブアミド化 / 7員環構築 / ドード-ベックウィズ環拡大反応 / catunaregin / ケタール化 |
研究実績の概要 |
抗腫瘍活性を有する三環性ジテルペノイド curcusone 類の合成研究に取組み、昨年度に引き続き7員環および6員環からなる二環性骨格の構築について検討した。 始めに当初の計画に従い、ペリルアルデヒドを出発物質としビニロガス向山アルドール反応、ジョンソンクライゼン転位、アルキン側鎖の導入の後、金触媒を用いたラクトン環化により側鎖上にγ-ラクトンを有する6員環化合物の合成を達成した。次いで、ワインレブアミド化によるラクトン環の開環と続く分子内アルドール縮合による二環性骨格の一段階での構築を検討した。すなわち、アルミニウム試薬またはグリニャール試薬による活性化条件、さらにはアミド化条件によるジメチルヒドロキシルアミンユニットの導入など、種々条件検討を行ったが、アミド化が進行せず7員環の構築には至らなかった。反応点のγ-ラクトンはエノール構造を含んでいるためラクトンカルボニル基の反応性が著しく低化しており望むアミド化が進行しなかったものと考えられる。 そこでジョンソンクライゼン転位により得られるエチルエステル体を二段階の変換によりエチルケトン体とした後、酸性条件下分子内アルドール縮合を行いトランスデカリン骨格を有するエノン体を合成した。次いでカルボニルα位に、メトキシカルボニル基、次いでヨードメチレン基を順次導入した後、ドード-ベックウィズ環拡大反応を行ったところ、シクロプロパン化を経由する6員環エノンの7員環エノンへの環拡大反応が進行し、curcusone 類の基本骨格となる二環性化合物の合成を達成した。 また昨年度行った酸性条件を用いた環化反応によるジヒドロフロピラン骨格構築法をさらに展開し、フラニルジオールの酸性条件下連続ケタール形成反応を検討した。その結果、マングローブ由来抗腫瘍性三環性ノルネオリグナン catunaregin の効率的合成法の確立に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた合成経路の検討に10ヶ月以上の時間を費やし、一旦保留することとした。しかしラジカル環拡大反応を用いた別経路の検討がスムーズに進展したことで、今年度の目標としていた7員環の構築に成功し、標的化合物の三環性骨格のうち、二環性骨格の構築に成功している。 合成した二環性化合物は最終化合物への変換が可能な官能基を備えており、以降は予定通りの変換反応を検討することで、curcusone 類の全合成達成が期待される。そのため本研究課題は概ね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
目的とする curcusone 類の合成には5員環部の構築を残すのみとなった。始めに5員環構築の足掛かりとしてメチルエステルをワインレブアミドへと変換する。得られるワインレブアミド体は、7員環上にカルボニル基とカルボニルβ-位にアミドを有している。そのため塩基によりカルボニル基をエノラートイオンとした後、ビニルグリニャール試薬を作用させ、ワインレブアミドヘのビニル化を行うことで、エノラートイオンのビニルケトンへの 1,4-付加を一挙に進行させ5員環部を構築する。次いで生成する 1,4-ジケトン部に二重結合を導入した後、5員環状の官能基を整えることで curcusone 類の合成が達成できるものと考えている。
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