研究課題/領域番号 |
26460017
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研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
宮岡 宏明 東京薬科大学, 薬学部, 准教授 (10231622)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | エーテル合成 / ニグリカノシド |
研究実績の概要 |
カリブ海産の緑藻から単離、構造決定されたニグリカノシドAは、特異な構造を持つ糖脂質である。ニグリカノシドAは、脂肪酸2分子が第二級炭素間でエーテル結合した脂肪酸二量体に、糖がエーテル結合した他に例を見ない構造であり、脂肪酸の6つの不斉中心およびグリセロールの1つの不斉中心の立体化学が未決定である。ニグリカノシドAの全合成における重要な課題は、第二級炭素間同士でエーテル結合した脂肪酸二量体の合成である。昨年度に引き続き、モデル化合物を用いたニグリカノシドAの合成に有用な第二級炭素同士の新規エーテル合成法の開発を検討した。 昨年度、エーテル形成反応の基質として想定した2-TBS-2-フェニルスルホニルオキシランを合成した。これに、第二級アルコールを作用させ、オキシランの開裂、フェニルスルホニル基の脱離による、2-アルコキシ-1-TBSエタノンの合成を検討した。塩基性条件および酸性条件など種々の反応条件を試みたが、目的の反応は進行しなかった。さらに、BF3・OEt, Cu(OTf)2, Bu3SnCl等のLewis酸などの添加剤を加えて反応を行ったが、原料を回収するか、分解するかであり、目的とした2-アルコキシ-1-TBSエタノンは全く得られなかった。 当初の計画を修正し、TESジアゾエステルと第二級アルコールから、2-アルコキシ-2-TESエステルの合成を行うことにした。1当量のTESジアゾエステルと1.5当量の第二級アルコールをRh(OAc)4存在下で反応させたところ、良好な収率でエーテル結合が形成され、2-アルコキシ-2-TESエステルが得られた。さらに、2-アルコキシ-2-TESエステルとアルデヒドをCsF存在下で反応させたところ、脱TES化を伴うアルドール反応が進行し、対応する3-ヒドロキシ-2-アルコキシエステルが得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、当初エーテル形成反応の基質として想定した2-TBS-2-フェニルスルホニルオキシランに対して、ルイス酸や塩基等の様々な添加剤の存在下、第二級アルコールを用いたエーテル結合の形成を検討したが、残念ながらエーテル結合の生成には至っていない。2-TBS-2-フェニルスルホニルオキシランは、末端エポキシドであるので、アルコキシドやアルコール等の求核試薬に対して反応性が高いと予想していたが、その予想に反し反応性がかなり低いことがわかった。これまでの検討の結果、LiBrを求核試薬として用いた場合のみ、反応が進行していることから考えると、かなりソフトな求核剤しか反応できないのではないかと考えられる。 そこで、当初の計画を修正し、TESジアゾエステルと第二級アルコールから、2-アルコキシ-2-TESエステルの合成を行うことを検討した。TESジアゾエステルと第二級アルコールをRh(OAc)4存在下で反応させたところ、良好な収率で2-アルコキシ-2-TESエステルが得られた。さらに、2-アルコキシ-2-TESエステルとアルデヒドをCsF存在下で反応させたところ、アルドール反応が進行し、対応する-ヒドロキシ-2-アルコキシエステルを得ることができた。3-ヒドロキシ-2-アルコキシエステルのエステル部を増炭することにより、ニグリカノシドAのエーテル部に相当する化合物が合成できると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、当初の計画を修正し、TESジアゾエステルと第二級アルコールから2-アルコキシ-2-TESエステルを得、これとアルデヒドをCsF存在下で反応させたることにより、3-ヒドロキシ-2-アルコキシエステルを得ることに成功した。今後は、本合成に用いている第二級アルコールとアルデヒドについて、様々なものを用いて、本合成法の一般性と限界を見極め、ニグリカノシドAのエーテル部の合成に用いることが可能か判断したい。 また、上記合成法とは別に、ジエポキシドカルボン酸の分子内エーテル化反応を用いた、新たなニグリカノシドAのエーテル部の合成についても検討する予定である。
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