研究実績の概要 |
申請者らは、新規ビナフチル型CD発色試薬を用いた絶対配置決定法を開発し、これまでにいくつかの生物活性天然物に適用し、その有用性を確認している。その中でステロール類の3位水酸基の絶対配置決定において、17位側鎖はCDスペクトルに影響を与えないが、5-6位二重結合は影響を及ぼすことが分かっている。そこで、ステロイド構造中の10-メチルビシクロ[4.4.0]デカン-3-オール部分が本法における必須構造要件であると仮定し、モデル基質としてA,B環に相当する計12種の1,2,3,4,4a,5,6,7-octahydro-4a-methyl-およびdecahydro-4a-methyl-2-naphthalenolを光学活性体として合成し、それらのビナフチル誘導体のCDスペクトルの挙動について検討した。 その結果、以下のことが明らかとなった。 1)6種のdecahydro-4a-methyl-2-naphthalenol類においては予想通り、2位S体は正の、R体は負のキラリティーが観測されたが、他の2種においては逆のキラリティーが観測された。 2)5-6位二重結合を有する4種のoctahydro-4a-methylnaphthalene-2-ol類においては、明確な分裂型CDを示さず、複雑なCDスペクトルを与えた。 今後は、今回合成したすべての誘導体について、量子化学計算を行い、構造のCDスペクトルに及ぼす影響について詳細に分析する予定である。
|