研究課題/領域番号 |
26460020
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研究機関 | 武庫川女子大学 |
研究代表者 |
河井 伸之 武庫川女子大学, 薬学部, 講師 (10411034)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | benzo[a]quinolizidine環 / Schulzeine / 形式合成 |
研究実績の概要 |
強力なαーグリコシダーゼ阻害作用を有する天然アルカロイドであるSchulzeine類のbenzo[a]quinolizidine環の構築に成功し、SchulzeineBの形式合成を達成した。 3位にアミノ基を有するbenzo[a]quinolizidine環を構築する上で、3つのルートからの合成を検討した。アミノ基を有する必要な炭素鎖を含む環化前駆体からは、分子内不斉転写を介した4位と11b位の結合形成が望み通りに進行しないことがわかった。前年度までに合成した1-プロペニルテトラヒドロイソキノリンからbenzo[a]quinolizidine環の4位に該当する窒素原子にアミノブテノイル基を導入し閉環メタセシス反応による1位と2位の結合形成方法では、望む分子内反応ではなく分子間反応による二量化がわずかに進行するだけであった。1-プロペニルテトラヒドロイソキノリンから炭素炭素結合を介したアルケンの官能基化と最後に分子内アミド化による4位と3位の結合形成により、最終目的物を合成することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究実施計画に基づき、Schulzeine類のbenzo[a]quinolizidine環の構築法を種々検討し、収束的合成でなく直線的合成アプローチにより構築し、最終的にSchulzeineBの形式合成を達成した。 分子内不斉転写反応による1位置換テトラヒドロイソキノリンアルカロイドの中で1位にカルボキシ基を有する非天然アミノ酸が、古くから知られている。しかし、その立体選択的な合成には改善の余地があり、また医薬品の開発ならびにペプチド化学での需要性が高いことから、本研究から分岐した研究として1位および3位テトラヒドロイソキノリンカルボン酸の合成を完了した。本合成法は、環化前駆体の両エナンチオマーを使わけることで、D体およびL体の環状アミノ酸をそれぞれ作り分けることができ、従来法に比べより実用的な方法となりうる。
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今後の研究の推進方策 |
1位に長い側鎖が置換したテトラヒドロイソキノリンアルカロイドであるOceania Aの合成を申請時に計画したが、1位の不斉炭素が(R)-体および(S)-体の等量混合物として存在することが研究開始後にわかった。1位の不斉炭素をそれぞれ作り分け可能な分子内不斉転写反応を、Oceania Aを合成する上で利用することは学術的にもメリットはないと考えられる。従って、現在までに発見した過塩素酸を触媒とした分子内不斉転写反応による1位置換テトラヒドロイソキノリン環構築のメカニズム研究を今後推進していく。
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