研究課題/領域番号 |
26460029
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
瀧本 真徳 独立行政法人理化学研究所, 侯有機金属化学研究室, 専任研究員 (50312377)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 銅触媒 / 有機亜鉛 / 二酸化炭素 / カルボキシル化 / イナミド / アレナミド / デヒドロアミノ酸 |
研究実績の概要 |
α,β―デヒドロアミノ酸誘導体の化学構造は、抗菌活性を持つ天然物の部分構造としてしばし存在し、また不斉水素化によって非天然型α―アミノ酸誘導体を与えるなど、有機合成化学上重要な化合物でもある。これまでα,β―デヒドロアミノ酸誘導体の合成法が数多く報告されているが、β―位に二つの異なる置換基を持つデヒドロアミノ酸誘導体の立体選択的合成法の例は少ない。本研究者は触媒量のNHC銅錯体を共存させると、電子吸引基を持つ窒素原子とアルキンとが直接結合した化合物であるイナミドの炭素―炭素三重結合に、ジアルキル亜鉛試薬由来のアルキル基と二酸化炭素が、位置及び立体選択的に付加し、非対称β,β-ジ置換-α,β―デヒドロアミノ酸エステル誘導体を与えることを見いだした。また、本系ではまず、初期検討において、アルキル供与体としてジアルキル亜鉛試薬を用いたが、入手容易なジアルキル亜鉛試薬は、比較的単純なアルキル基を持つものに限られていた。そこで、適用範囲の拡大を目指し、ヨウ化アルキル亜鉛試薬を用いた検討を進めた。ヨウ化アルキル亜鉛試薬は調製が容易であることに加え、エステル基などのなどの官能基をアルキル基上に持たせることが可能な点で有用であると期待される。詳細な反応条件等の検討の結果、環状構造をもつイナミドに対し、銅(II)アセチルアセトナーと触媒として用いると、ヨウ化アルキル亜鉛試薬を用いても比較的円滑にイナミドのカルボ亜鉛化反応が進行し、LiCl共存化に二酸化炭素と反応させることで、目的とするカルボキシル化が進行することを見いだした。またNHC銅錯体を用いる触媒系で、ジアルキル亜鉛と二酸化炭素がアレナミドに位置および立体選択的に付加する反応を見いだした。本系はβ位にアミド基を有する不飽和カルボン酸を与え、このものは、β―アミノ酸の合成中間体として有用と考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していたように、イナミドのアルキル化―カルボキシル化反応の基質適用範囲の拡大を進めることができた。また、同時に、反応に用いるアルキル化剤である有機亜鉛試薬も、その適用範囲の拡大を、ハロゲン化有機亜鉛へと拡大することができた。また、イナミド類似化合物である、アレナミドにおいても類似のアルキル化―カルボキシル化反応が進行することを見いだすことができた。以上の様に、本年度当初の計画をほぼ達成できた。
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今後の研究の推進方策 |
ハロゲン化有機亜鉛試薬を用いるイナミドのアルキル化―カルボキシル化反応において、基質の適用範囲の拡大、官能基を持つハロゲン化有機亜鉛試薬などアルキル化の適用範囲の拡大を目指す。また新しく見いだした、アレナミドのアルキル化―カルボキシル化反応においても基質の適用範囲、用いる有機亜鉛試薬の適用範囲の拡大に向けて検討を進める。また得られた生成物に関して、キラルなアミノ酸誘導体への変換法など、応用面での研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該計画の遂行が順調に進んだため、試行に必要な薬品数及びガラス器具、理化学機器等の消耗品の使用量が当初見込みより減少した。
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次年度使用額の使用計画 |
本研究の途上、アリル位の選択的C-Hカルボキシル化反応といった、本研究に深く関係があるものの、予測外の形式反応を見いだしたため、次年度仕様額はこの新しい反応の研究遂行に充てる。
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