研究実績の概要 |
生命現象を明らかにする上で、微量生体分子の分離・定量は重要である。生体分子の分離技術として液体クロマトグラフィーは必須である。従来の液体クロマトグラフィーにおいては、粒子充填型カラムを用いた分離が行われているものの、分離能に限界があることが知られていた。そこで、本研究においては、既に理論的に高い分離能を有することが知られていたピラーアレイカラムに着目して研究を行った。 今年度は、ピラーアレイカラムの高性能化に関する検討の一つとして、圧力損失の小さい新規低拡散曲線構造の開発を行った。はじめに、計算流体力学シミュレーションを行ない、曲線構造におけるピラー配置の最適化を行った。続いて、紫外線フォトリソグラフィと深掘り反応性イオンエッチングにより、20 × 20 mmのシリコン基板上に最適化した新規低拡散曲線構造を有するピラーアレイカラムを作製した。ピラーアレイの表面を逆相クロマトグラフィー用にoctadecylsilyl基で修飾した。背圧計測と蛍光色素2種の分離実験の結果から、新規低拡散曲線構造が実際に低圧力損失(等流路長曲線構造の1/7)かつ低拡散(等流路長曲線構造と同等)であることを明らかにした。さらに、生体分子分析への応用例としてアミノ酸の分離を試みた。低圧力損失になったことから、高流速での分離が可能となり、4-fluoro-7-nitro-2,1,3-benzoxadiazole (NBD-F)により蛍光誘導体化した6種アミノ酸を60秒以内に分離することに成功した。
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