研究実績の概要 |
本研究は、ほとんどすべてのβ-ラクタム剤を加水分解する酵素メタロ-β-ラクタマーゼ(MBL)の中で、特にセフェム系を非常に効率よく加水分解するKHM-1の機能解析を物理化学的手法を用いて行うことを目的としている。 KHM-1は、MBLであるIMP-1とアミノ酸相同性が約59%であるが、結晶構造の比較では、主鎖と二次構造ではほとんど差が見られなかった(論文執筆中)。IMP-1では基質がペニシリン系からセフェム系に変わると触媒活性が約10倍上がるが、KHM-1では約1000~10000倍上がる。このことから、KHM-1はセフェム系β-ラクタム剤を好んで加水分解することが知られている(J. Sekiguchi, et al., Antimicrob. Agents Chemother., 2008)。 平成27年度は、KHM-1の構造解析において高触媒に影響を与えていると考えられるアミノ酸残基に変異を加える実験を行った。KHM-1遺伝子を遺伝子操作用プラスミドに組み込み、変異を加えて大量発現系プラスミドに再度、組み直した。この変異プラスミドを大量発現用の大腸菌に導入し、KHM-1変異体の発現と可溶化、精製を行った。その結果、WildType(WT)と同様に高純度で大量精製することができた。 そこでKHM-1変異体のセフェム系β-ラクタム剤に対する加水分解活性を測定した。対照実験として、KHM-1(WT)とIMP-1で行った。現在、ペニシリン系β-ラクタム剤に対する活性と比較検討を行っている。 本研究は、MBLの基質認識機構と触媒機構の解明を目的としている。この研究成果は、未だ臨床上にないMBL阻害剤の開発につながることを期待している。
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