本年度は、FLAPと5-lipoxygenase (5-LO)、およびFLAPとその阻害薬であるMK-591との相互作用解析を行った。FLAP-5-LOの相互作用解析を行うために、まず野生型5-LOの発現・精製方法の探索を行った。精製した5-LOを、FLAPを含むナノリポプロテイン粒子(FLAP-NLP)と混合し、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により分析した結果、FLAP-NLPの溶出フラクションに5-LOが含まれており、5-LOがFLAP-NLPと結合することが示された。しかし、野生型5-LOは、脂質に対する結合活性も有しており、5-LOとFLAPとの特異的な相互作用を検出するためには、今後NMR等を用いた解析が必要であると考えられる。一方、FLAPとMK-591との相互作用解析を行うため、重水素標識とMetとIleのメチル基選択的13C標識を施したFLAPを調製し、重水素化DDMミセルに可溶化した状態で精製した。精製したFLAPに対してMK-591を添加し、NMRスペクトルを測定した結果、FLAP結合状態のMK-591のtert-butyl基に由来すると考えられるシグナルが検出され、FLAPがDDMミセル中においてMK-591結合活性を有していることが示された。さらに、MK-591結合に伴うFLAP由来シグナルの変化を解析した結果、5個以上のシグナルについて、化学シフト変化が観測された。化学シフト変化が観測された残基のうちMet89は、X線結晶構造において、MK-591から10Å以上離れた位置に存在することから、MK-591の結合に伴い、FLAPに構造変化が誘起された可能性が示唆された。このような構造変化が、膜から5-LOへのアラキドン酸の輸送に重要な役割を果たす可能性が考えられる。
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