研究課題/領域番号 |
26460039
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
板井 茂 静岡県立大学, 薬学部, 教授 (80453059)
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研究分担者 |
岩尾 康範 静岡県立大学, 薬学部, 講師 (30433022)
野口 修治 静岡県立大学, 薬学部, 准教授 (60237823)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | クラリスロマイシン / 放出制御製剤 / 結晶転移 / 胃内浮遊性製剤 |
研究実績の概要 |
[FormⅠ製剤が外部溶液と接すると錠剤表面よりFormⅡあるいはFormⅣの微細な針状結晶が析出し、それが錠剤表面を覆うことにより、外部からの水の浸透が抑制され溶出が制御される」という仮説を設定してクラリスロマイシン(CAM)高含有の徐放性製剤の設計と評価を実施した。まず、FormⅠあるはFormⅡ200mgに対し、ヒドロキシプロピィルメチルセルロース(HPMC)を20から100mg添加し、滑沢剤であるステアリン酸Mgを加え直接打錠し、その溶出試験を実施した。その結果、FormⅡ製剤ではHPMCの含量低下に伴い薬物放出速度は増加しましたがFormⅠ製剤ではHPMCの含量を低下させても,薬物放出速度は変化せず、FormⅠを用いることでCAM高含有の徐放性製剤が設計可能であることが示唆された。しかし、FormⅠだけでは薬物溶出は不十分であった。そこで、FormⅠとFormⅡの配合比を変化させHPMC40mg、ステアリン酸Mg2gを含有する1錠重量242mgの錠剤を作製し、溶出試験を実施した。その結果、主薬中のForm I の割合の低下に伴い,薬物放出速度は増加した。得られた放出パターンを0次に回帰させたところ、FormⅠの比率が10~70%の間に亘り相関係数が0.97以上の値となり、FormⅠの割合を変化させることにより薬物放出速度を容易に調節可能な0次放出型徐放性製剤が得られた。次に Form IーFormⅡ配合製剤をそれぞれ40度/75%RH及び24度/40%RH条件下で3か月保存し, 保存後の錠剤に対して溶出試験を行った その結果, 40度/75%RH保存後の各錠剤は, 結晶転移により、保存前と比較してCAM放出が加速したが、 24度/40%RH保存後の各錠剤では, CAM放出挙動における顕著な差異は認められなかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Form Iを用いることで, CAM高含有の徐放性製剤が調製可能であることが示唆された。 主薬にForm Ⅰ及びFormⅡの混合物を用い, その混合割合を変化させることで, 薬物放出速度を容易に調節可能な0次放出型徐放性製剤が得られた。このForm I含有錠剤は24度RHにおいて, 3ヶ月間安定に存在することが明らかとなった。しかし40度/75%RH保存では、FormⅠが経時的にFormⅡに変化し、溶出速度も増加した。以上より, CAMの結晶転移を応用した新規徐放性製剤の開発が可能性が示されたが、このままでは室温での長期安定性の維持は難しく、冷所保存となるため、更なる改善が必要であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
胃内浮遊性製剤の設計を昨年度より開始した。昨年度のFormⅠ-FormⅡ配合製剤の結果より、FormⅠを溶液中でFormⅡに転移する製造法では室温で長期間の安定性を保持することは困難であることがわかった。そこで本年度は撹拌溶融造粒法より、造粒中の加熱と撹拌力により、造粒過程でFormIからFormIIへの結晶転移を起こすことを企図した製剤設計を実施する。熱溶融性結合剤としては、脂溶性の異なる3種の脂質を選択し、その物性が製剤浮遊性に及ぼす影響を比較する。本法で製造した製剤は製造中に空気を取り込んだ状態でFormⅡ製剤となり、脂質添加による疎水性が増加するため、長期安定性を保持したCAM高含有胃内浮遊性製剤となる可能性がある。得られた最適処方製剤についてはスナネズミを用い、H,pylori除菌効果を確認する。
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