研究実績の概要 |
疎水性の異なる3種類の脂質のいずれかを結合剤として用い,撹拌溶融造粒法により、 CAM 75 %含有造粒物を調製した. また、 粒子径画分の異なるEudragit RS POを結合剤として用い湿式撹拌造粒法により, CAM 80%含有造粒物を調製した. それぞれの造粒物について粉体物性と浮遊性, 薬物放出特性の評価, さらに放射光X線CTを用いた造粒物内部構造の観察を行った. 撹拌溶融造粒法により調製した造粒物は, in vivo評価としてスナネズミを用いて胃内滞留性およびH. pylori除菌効率の測定を行った.さらに, 各造粒操作, 結合剤との共保存およびエタノール気体中処理が, CAMの結晶形に及ぼす影響について、検討した.撹拌溶融造粒法により調製した造粒物は,24時間以上の浮遊性および徐放性を示した.造粒物の内部構造の観察により造粒物中に空隙が存在することが明らかとなり, 溶液中でも空隙に空気を保持することで造粒物の粒子密度を低下させ, 浮遊性に寄与することが示唆された. In vivo 胃内滞留性試験より, 浮遊性造粒物はCAM分散液よりも有意に長時間胃内に滞留し, その結果, H. pyloriの除菌効率を増強させることが示唆された. 湿式撹拌造粒法により調製した造粒物においては, CAMの粒子径の10倍以上の結合剤粒子を用いることで造粒物内部に空洞が形成され, 結合剤の粒子径が増大するほど空洞および造粒物の粒子径も増大し, 長時間の浮遊性および徐放性を示すことが明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一昨年度のFormⅠを溶液中でFormⅡに転移する製造法では室温で長期間の安定性を保持する製剤を得ることは出来なかった.そこで、昨年度は撹拌溶融造粒法により、脂溶性の異なる3種の脂質を熱溶融性結合剤として選択造粒した結果、製剤内に空気を取り込んだ性状を持つ製剤が得られ、In vivo 胃内滞留性試験より, 浮遊性造粒物はCAM分散液よりも有意に長時間胃内に滞留し, その結果, スナねずみを用いた、びH. pylori除菌効率は分散液と比較し、有意に上昇した。CAMの結晶多形に着目した検討では, 撹拌溶融造粒を行うことで, 通常の加熱よりも低温度かつ非常に短時間でCAMを準安定形結晶から安定形結晶へ転移した. また、エタノール気体中でCAMを処理することにより, 再結晶せずとも、結晶転移が起きることが、明らかになった.
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