研究課題/領域番号 |
26460042
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研究機関 | 城西大学 |
研究代表者 |
関 俊暢 城西大学, 薬学部, 教授 (60196946)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | タクロリムス / 皮膚適用 / 全身性副作用 / 微粒子化 / 刺激応答性 |
研究実績の概要 |
タクロリムスの皮膚適用後の局所滞留と全身移行について、角質層のバリア能の変化、皮膚内での浮腫形成の影響の観点から調査し、ラットを用いた実験において以下の結果を得ている。 タクロリムスの全身移行量は、角質層のバリア能に依存しており、経皮膚水分蒸散能を測定することで、全身移行の程度を予測できることを明らかとした。 皮膚内での浮腫の形成は、適用初期には全身移行の抑制をもたらすが、時間の経過とともに全身への移行性が上昇していき、定常状態では浮腫がない場合より高い血中濃度が観察された。これには、炎症による血流の増加と血管透過性の向上が関係していることが示された。浮腫がある皮膚では、皮膚中薬物量が高いことが示され、タクロリムスの高いタンパク質結合性がこれに関わると考えられた。投与初期での低い全身移行性もこのことに関係することが推察されている。血管収縮薬をタクロリムスと併用して皮膚適用すると、全身移行が抑制し、このことは、タクロリムスの全身性の副作用の抑制法として応用可能と期待できる。 タクロリムスの刺激応答性微粒子化については、その基本骨格となるロタキサン分子の合成を行っている。まだ想定している担体分子の合成は成功していない。早急に問題点を解決してロタキサン分子とタクロリムスの相互作用について検討したいと考えている。 ロタキサン分子を用いた評価に先立ち、シクロデキストリンとその誘導体を用いてタクロリムスとの相互作用を解析し、また、皮膚適用後の吸収動態への影響を評価した。ジメチルβシクロデキストリンとタクロリムスの間で安定した複合体の形成が観察された。タクロリムスとジメチルβシクロデキストリンを同時に皮膚適用するとタクロリムスの全身移行が増大し、可溶化の効果が強く現れたと考えられた。一方、ジメチルβシクロデキストリンを皮膚に前処理することで全身移行抑制が可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
タクロリムスの担体としてはたらくロタキサンの合成とその微粒子化について、予定では基本的な合成法が確立していることになっているが、それがまだなされていない。一方、シクロデキストリンとタクロリムスの皮膚組織内での相互作用に関する情報など、当初予定に組み込んでいなかった情報が得られている。総合的に考えて、やや遅れていると判定することが妥当と考えた。
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今後の研究の推進方策 |
タクロリムスの担体としてはたらくロタキサンの合成とその微粒子化について、早急に完成させる。その一方で、必ずしも担体の構造としてロタキサン構造にこだわる必要もなく、適切な刺激応答性を付与できるのであれば、他の骨格を有する高分子でも利用可能と考える。そこで、他の基本構造を有するシクロデキストリン修飾高分子にも研究範囲を広げ、ロタキサンの合成と平行して取り組むことで、結果として優れたロタキサン分子が得られなかった場合でも研究の当初の目的が達成可能なように計画を修正する。
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