研究実績の概要 |
免疫抑制剤であるタクロリムスの皮膚透過性と皮膚の状態の関係について、詳細な検討を行った。すなわち、ヘアレスラットモデルおよびダニ抗原を用いたアトピー性皮膚炎モデルマウスを用い、角質層のバリア能の低下と全身吸収が正の相関をすること、炎症による血流量の上昇だけでなく、血管透過性の増加もタクロリムスの全身移行に影響すること、血管収縮薬の併用が全身移行の抑制に有効であることを明らかにしている。また、皮膚中タクロリムス濃度と全身移行量の関係は非線形性を示し、ある皮膚中濃度を超えるとタンパク結合が飽和してタクロリムスの全身移行量が急激に高まることを明らかとしている。軟膏剤の希釈適用は、この飽和現象を生じさせないレベルで、皮膚中濃度を保ち、薬効を維持しつつ、全身移行を低下させる有効な方法であることを示している。これらの結果は、Biol. Pharm. Bull., 39:343–352 (2016)に発表している。 ロタキサン型のタクロリムス担体については、その主要部分である、アジ化シクロデキストリンからなるシュードロタキサンおよびロタキサンの合成に成功しており、またその一方で、αシクロデキストリンとβシクロデキストリンが結合した二量体の合成にも成功している。今後は、それらの技術を組み合わせて、シクロデキストリンぶら下がり型のロタキサン分子を合成し、タクロリムスとの相互作用、包接や刺激による粒子の形状変化について検討をする予定である。 粒子の膜中の移行に関しては、モデル膜として寒天膜などを利用して実験を行っており、その結果と炎症が生じている皮膚での結果の相関について、今後検討していく予定である。
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