研究課題/領域番号 |
26460044
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
宮内 正二 東邦大学, 薬学部, 教授 (30202352)
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研究分担者 |
菊川 峰志 北海道大学, 先端生命科学研究科(研究院), 講師 (20281842)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | トランスポーター / 分子弁 / 輸送サイクル / 基質認識機構 / 基質認識機構 / モジュレーター / 水素結合ネットワーク / 起電性輸送担体 |
研究実績の概要 |
本研究において、ヒトH+/オリゴペプチド共輸送担体 (PEPT) における、第二膜貫通領域 (TDM2) に存在する輸送活性中心His57と水素結合ネットワークを介して相互作用し,輸送活性調節に関与するアミノ酸残基Ser302を明らかにした。更に、Ser修飾試薬 phenylmethylsulfonyl fluoride (PMSF)によりPEPTの基質輸送活性の中心となるHis57のイミダゾ-ル基のpKaが酸性にシフトする結果が得られ、Ser302の水酸基との間の水素結合はSer水酸基を活性化することができる強さであることが、明らかとなった。これら相互作用は基質輸送の方向性を決定する分子弁として働いていることが明らかとなった。現在、この分子弁がどの様に機能しているかを熱力学的に検討することを目的として、PEPT大量発現細胞HeLa細胞から膜ベシクルを調製し、等温滴定型熱量計を用いて、構造変化に伴う熱の出入りを測定している。 一方、Na+/モノカルボン酸共輸送担体 (SMCT) の輸送分子機構解明を目的として、様々な基質の基質輸送―構造活性相関 (QSAR) を検討した。その結果、SMCTはモノカルボン酸のみならず、アミノ基等を有する双極性化合物も認識し輸送する能力を有していることが明らかとなった。更に、興味ある知見として、PEPT同様、ある輸送基質共存下で、SMCTがNa+チャンネルとして振る舞うことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PEPTおよびSMCTにおいて分子弁が存在することが明らかとなり、本研究の目的の一つである分子弁の同定が達成できた。このペースで研究を進めてゆく。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度における研究成果より、基質の移動の際に逆流を防ぎ一方方向に基質を移動させる機構を担っている分子弁が存在することが明らかとなった。本年度では、PEPT大量発現細胞HeLa細胞から膜ベシクルを調製し、①脂溶性ジペプチドアナログに光ラベル化剤を付加したプローブを用いて、分子弁に関与するアミノ酸残基を同定する。また、②これらアミノ酸残基の変異体をアフリカツメガエル卵母細胞に発現させ、基質輸送の速度論的解析を行い、基質輸送に伴った協奏的構造変化に関与するアミノ酸残基を同定し、分子弁モデルを更に発展させる。更に、PEPTには、PEPTにおける分子弁が、どの様に輸送駆動力のH+電気化学ポテンシャルを利用し基質を移動させているかを、PEPT大量発現細胞HeLa細胞から膜ベシクルを調製し、等温滴定型熱量計(ITC)を用いて熱力学的に明らかにする。ここで、タンパク質内基質移動と駆動力との関わり合いを新しく考案したピンポン滴定法により行う。即ち、基質存在化、非存在化において駆動力イオン(H+)の熱量滴定を行い、どの様な分子機構で駆動力となるH+が基質のタンパク質内移動を制御しているかを熱力学的に明らかにする。 一方、SMCTの基質輸送―構造活性相関(QSAR)を進展させ、それに基づく新たな内因性基質の探索を行ってゆく。また、SMCTがNa+チャネルとして振る舞う詳細な機構を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
電気生理学的実験に用いるRNA合成試薬を購入することが無かった分、差額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
電気生理学的実験に用いるRNA合成試薬を補充するために購入する。
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