研究課題/領域番号 |
26460046
|
研究機関 | 星薬科大学 |
研究代表者 |
服部 喜之 星薬科大学, 薬学部, 准教授 (90350222)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | siRNA / 正電荷リポプレックス / がん / コンドロイチン硫酸 / ポリグルタミン酸 |
研究実績の概要 |
負電荷ポリマー投与直後に正電荷リポプレックスを投与する連続投与法により、siRNAの肺集積性を減少させ、効率よくがん組織にsiRNAを送達できるか検討した。負電荷ポリマーとして、ポリグルタミン酸(PGA)、コンドロイチン硫酸(CS)またはヒアルロン酸(HA)を用いた。正電荷リポプレックスをマウス尾静脈内投与したところ、主に肺においてsiRNAの集積が観察された。一方、負電荷ポリマー投与1分後に正電荷リポプレックスを投与した場合、PGAまたはCSとの連続投与においては主に肝臓、HAとの連続投与においては肺にsiRNAの集積が観察された。また、マウス血液から単離した赤血球を用いて凝集試験を行ったところ、正電荷リポプレックスとの混合では大きな凝集体が観察されたが、予め赤血球にPGAまたはCSを混合しておくと正電荷リポプレックスを加えても凝集は観察されなかった。このことより、PGAまたはCSは血液中で正電荷リポプレックスと相互作用し、赤血球との凝集を防ぎ、肺へのsiRNAの移行性を減少させたものと考えられた。次に、siRNAのがん組織への移行性を確認するために、神経芽細胞腫Neuro2a細胞を皮下移植した担がんマウスを作製し、負電荷ポリマーと正電荷リポプレックスを連続投与した。しかしながら、PGAおよびCSどちらを用いた場合も腫瘍組織へのsiRNAの集積性は低かった。連続投与法によりsiRNAの集積が主に肝臓に見られたことから、肝転移がんに対してsiRNAを送達するための手法として有用ではないかと考えた。そこで、ヒト乳がんMCF-7細胞をマウス脾臓内注射することで肝転移がんマウスを作製し、負電荷ポリマーと正電荷リポプレックスを連続投与した。その結果、PGAおよびCSを用いた連続投与によりsiRNAは肝転移がんを含む肝臓全体に集積させることができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の初年度の目標は、負電荷ポリマーとsiRNAリポプレックスの連続投与によりsiRNAをがん組織へ送達することであった。そして、正電荷リポプレックスの表面に特別な修飾を施すことなく、正電荷リポプレックス投与直前にコンドロイチン硫酸やポリグルタミン酸を投与することにより、siRNAの生体内分布を大きく変化させ、主に肝臓や肝転移がんにsiRNAを送達させることができることを見出した。腫瘍組織への連続投与法によるsiRNAの送達においては、当初、皮下移植モデルの腫瘍(固形がん)へsiRNAを送達させることを目的としていた。しかしながら、皮下移植したがん組織へのsiRNAの送達性は十分ではなかったものの、肝転移がんに対しては効率よくsiRNAを送達できることが判った。がんの移植モデルは当初の目的のものとは変更となったが、連続投与法によるがん組織へのsiRNAリポプレックスの送達法の開発は計画通り進んでいるものと考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
連続投与法により肝転移がんに送達されたsiRNAが、がん細胞の遺伝子発現を特異的に抑制できるかどうか調べるために、ルシフェラーゼ安定発現株であるヒト乳がんMCF-7-Luc細胞を用いて肝転移がんモデルマウスを作製し、ルシフェラーゼに対するsiRNAを用いて調製した正電荷リポプレックスと負電荷ポリマーを連続投与する。その後、肝転移がんのルシフェラーゼ活性を測定し、肝転移がんに対する遺伝子発現抑制効果を調べる。また、連続投与法により正電荷リポプレックスを頻回投与した際の副作用についても調べる。そして、連続投与法において最適な負電荷ポリマーとがんの増殖を抑制するsiRNAを用いて調製した正電荷リポプレックスを連続投与し、抗腫瘍効果を調べる。負電荷ポリマーと正電荷リポプレックスの連続投与により、肝転移がんに対し効率よくsiRNAを送達し、標的遺伝子の発現抑制効果によりがんの増殖を抑制できる新しいsiRNAによる治療法の開発を目指す。
|