昨年度、コンドロイチン硫酸とsiRNAリポプレックスを連続投与すると(連続投与法)、肝転移がんに効率よくsiRNAを送達し、標的遺伝子の発現を抑制できること、さらに、負電荷ポリマーとしてコンドロイチン硫酸を用いると副作用が少ないことを明らかにした。また、ヒト乳がんMCF-7細胞を移植した肝転移がんモデルマウスに、がんの転移を抑制できるprotein kinase N3 (PKN3) siRNAを連続投与法で投与すると、転移がんの増殖を抑制できることも報告した。 今年度は、ヒト乳がんMDA-MB-231細胞を移植した肝転移がんモデルマウスにおいてもPKN3 siRNAを用いた連続投与法により同様に抗腫瘍効果が得られるか調べた。その結果、PKN3 siRNAを用いた連続投与法は、MDA-MB-231肝転移がんの増殖を抑制することができた。さらに、治療後のがんが転移した肝臓からRNAを抽出し、PKN3 mRNAの発現量を定量PCRで調べたところ、PKN3 siRNAの投与によりPKN3 mRNAの発現量が低下していることも確認できた。 また、コンドロイチン硫酸とsiRNAリポプレックスの連続投与においては、コンドロイチン硫酸を静脈内投与していたが、筋肉内注射や皮下注射でも肝臓にsiRNAを送達できるかどうか検討した。その結果、コンドロイチン硫酸の筋肉内注射や皮下注射でもsiRNAを効率よく肝臓に送達でき、さらに肝臓の標的遺伝子の発現を抑制できることが判った。 以上の結果から、コンドロイチン硫酸とsiRNAリポプレックスの連続投与は、コンドロイチン硫酸の投与経路に関わらず、siRNAを肝臓に送達できること、また、PKN3 siRNAを連続投与法で投与することにより、肝転移がんの増殖を抑制できることが判った。
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