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2015 年度 実施状況報告書

脱法ハーブ問題で包括指定された合成カンナビノイド類を迅速に判定する分析法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 26460049
研究機関星薬科大学

研究代表者

斉藤 貢一  星薬科大学, 薬学部, 教授 (40386347)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2017-03-31
キーワード脱法ハーブ / 合成カンナビノイド / GC/MS / ヘッドスペース固相マイクロ抽出 / DART-TOFMS / 危険ドラッグ / LC/TOF-MS / 光イオン化-GC/MS
研究実績の概要

合成カンナビノイド類を乾燥植物に添加した、いわゆる“脱法ハーブ”の乱用が近年増加し、大きな社会問題となっている。そのため脱法ハーブの迅速なスクリーニング法が求められている。申請者は前年度までの研究において、液体クロマトグラフィー/飛行時間型質量分析法(LC/TOF-MS)による合成カンナビノイド類の一斉分析法を構築すると共に、未知の合成カンナビノイド類の保持時間を推測するため、オクタノール/水分配係数(log Pow)値と保持時間との相関性を考察し、線形予測解析が可能であることを示した。他方、法科学分野における違法薬物分析では,原理の異なる複数の技法を用いて分析することが推奨されている。そこで今回,ヘッドスペース固相マイクロ抽出(HS-SPME)-ガスクロマトグラフィー/質量分析法(GC/MS)の適用を検討した。測定対象の合成カンナビノイド類には、JWH系27種、AM系10種、HU系2種、RCS系2種およびその他7種の計48種を選定した。HS-SPME-GC/MS では,試料(乾燥植物片20 mg)をHSバイアル瓶に採り,そのまま分析に供した。測定条件の最適化を検討した結果、SPMEファイバーにはPolyacrylateを用いることで、GC/MS測定(SCANモード)により、48種全ての物質において分析が可能となった。実サンプルの分析では夾雑物による影響をほとんど受けることがなく、その保持時間とMSスペクトルから含有される物質の推定が可能であった。また、実際に薬物乱用者が使用したと思われるハーブの残渣を分析したところ、合成カンナビノイドの一種AB-CHMINACAが含有されていることが判明した。以上の結果から、本法は脱法ハーブの分析法として一切の前処理を必要としない簡便・迅速で有用性の高いスクリーニング法であることが示された。本研究で構築した方法は、今後ますます増えるデザイナードラッグを分析する方法として有用であると考えられる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平成27年度の研究実績では、当該年度の研究課題に挙げた、「HS-SPME-GC/MSを用いて合成カンナビノイドの測定法を構築する」の研究を実施し、これらの成果を日本分析化学会第64年会において発表した。その際、実試料分析において合成カンナビノイドの同定に有用であることを示すことができた。また、本研究で構築した方法および前年度において検討したLC/TOF-MS分析並びにGCでの保持時間とlog Pow値との相関性に基づく線形予測解析法を併用することで、実際に薬物乱用者が使用したと思われるハーブの残渣を分析して、合成カンナビノイド類の一種が含有されていることを明らかにすることができた。更に、合成カンナビノイドの迅速分析法として、Direct Analysis in Real Time (DART)-TOFMSを用いた高精度な定量分析法や、光イオン化 (Photoionization:PI)-GC/MS法について検討し、それぞれ良好な結果が得られ、研究成果の一部を学会発表してきた。このように原理の異なる複数の技法を用いて分析することの有用性と実用性を実証できたことから、本年度の研究課題に対しておおむね順調な実績を達成したと考える。

今後の研究の推進方策

平成26年4月の薬事法改正により,違法薬物使用者は使用罪の適応を受けることになったが,使用罪を立証するためには,血液や尿などの生体試料から違法薬物を検出することが肝要となる。そのため,違法薬物の鑑定では,所持と使用の両面を考慮した分析を行う必要がある。平成28年度においては、当初の研究計画に基づいて、LC/TOF-MSおよびHS-SPME-GC/MSを用いて血液など生体試料中に微量に残留する合成カンナビノイド類の分析方法を検討する。その際の戦略としては、平成23年度の基盤研究(C)「大麻および痩身薬などゲートウェイドラッグの乱用を迅速に判定する方法の開発」において発明した前処理法(固相分散抽出法;実用新案取得)を活用する。また、GC/MSにおいても、平成27年度に構築したHS-SPME法を基にしてその応用方法を検討する。他方、GCにおける保持時間と合成カンナビノイドの質量保持比について、計算化学的手法を駆使して定量的に説明可能か否か検討する。更に、GC/MSでのフラグメント解析を加味し、今後新たに出現する未知ピークについての構造推定を行う方法を検討することで、違法薬物の判定をより確かなものにする。

次年度使用額が生じた理由

合成カンナビノイドの試薬類は、購入に際して輸入品となることが多く、年度末に発注した場合、納品が翌年度になる可能性があったため、本研究事業のように3年間の継続事業においては、新年度において直ちに購入が可能になるように若干の余裕を持たせた。

次年度使用額の使用計画

合成カンナビノイドの分析を行うためには“標準品”が必要となり、更に、GC/MSやLC/MSなど、高精度な装置で分析を行うためには各標準品の安定同位体や分離分析に必要なHPLCカラムやGCカラムも必要になることから、次年度の研究費は、これら試薬など消耗品の購入を主として当てる。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2015 その他

すべて 学会発表 (5件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)

  • [学会発表] ベンゾジアゼピン系薬物の人工胃液中における安定性および液性変化に伴う分解中間体の可逆的な回復挙動の検証2015

    • 著者名/発表者名
      斉藤貢一,齋藤沙知,西山莉可,伊藤里恵
    • 学会等名
      日本法科学技術学会第21回学術集会
    • 発表場所
      柏の葉カンファレンスセンター
    • 年月日
      2015-11-12 – 2015-11-13
  • [学会発表] α-PVP含有危険ドラッグのDART-TOF MSによる高精度な定量分析法の検討2015

    • 著者名/発表者名
      杉江謙一,阿久津守,斉藤貢一
    • 学会等名
      日本法科学技術学会第21回学術集会
    • 発表場所
      柏の葉カンファレンスセンター
    • 年月日
      2015-11-12 – 2015-11-13
  • [学会発表] 乱用薬物分析における試料前処理法2015

    • 著者名/発表者名
      斉藤貢一
    • 学会等名
      日本分析化学会第64年会
    • 発表場所
      九州大学伊都キャンパスセンターゾーン
    • 年月日
      2015-09-09 – 2015-09-11
    • 招待講演
  • [学会発表] 固相分散抽出法および固相蛍光誘導体化法を用いたHPLC による血清中のエフェドリンとプソイドエフェドリンの微量分析2015

    • 著者名/発表者名
      斉藤貢一,川上 彩香,伊藤 里恵
    • 学会等名
      日本法中毒学会第34年会
    • 発表場所
      九州大学医学部百年講堂
    • 年月日
      2015-06-26 – 2015-06-27
  • [学会発表] 合成カンナビノイド分析における光イオン化(PI)GC/MSの有用性の検討2015

    • 著者名/発表者名
      阿久津守,杉江謙一,斉藤貢一
    • 学会等名
      日本法中毒学会第34年会
    • 発表場所
      九州大学医学部百年講堂
    • 年月日
      2015-06-26 – 2015-06-27
  • [備考] 星薬科大学 薬品分析化学教室 研究業績

    • URL

      http://polaris.hoshi.ac.jp/kyoshitsu/bunseki/publications.html#p02

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公開日: 2017-01-06  

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