合成カンナビノイド類を乾燥植物に添加した、いわゆる“脱法ハーブ”の乱用が近年増加し、大きな社会問題となっている。また、2014年4月の薬事法改正により、違法薬物使用者は使用罪の適応を受けることになったが,使用罪を立証するためには,血液や尿などの生体試料から違法薬物を検出することが肝要となる。そのため,違法薬物の鑑定では,所持と使用の両面を考慮した分析を行う必要がある。申請者は前年度までの研究において、LC/TOF-MSおよびヘッドスペース固相マイクロ抽出(HS-SPME)-GC/MSを用いた分析法を検討し、脱法ハーブ中に含有される合成カンナビノイド類の一斉分析法を確立し、実際に薬物乱用者が使用したと思われるハーブの残渣にも適用可能であることを示した。 本年度は、これらの構築した分析法を発展させ、血液(血清および全血)中合成カンナビノイド類のスクリーニング法の構築を検討した。その結果、LC/TOF-MS分析では、血液を固相分散抽出法によりクリーンアップすることで、100μLという微量の血液サンプルから47種の合成カンナビノイド類を迅速かつ高精度に分析できる方法を構築した。また、HS-SPME-GC/MS分析では、血液中のコレステロールが合成カンナビノイドのGC/MS測定に際して妨害となることがあったが、コレステロールオキシダーゼによりコレステロールを別の物質に変化させるという手法を考案したことで、より簡便・迅速に血液中合成カンナビノイド類のスクリーニングが可能となった。以上の結果から、本研究で構築した方法は、血清および全血中の合成カンナビノイド類のスクリーニング法として有用であることが示され、本研究事業タイトルで示された目的は達成されたと考える。今後、本法の法科学分野への活用が期待される。
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