研究課題
最終年度である平成28年度は、これまでの当該助成事業2年間で得られた情報の全てを可能な限りフィードバックして、(1)特異抗体産生能の増強および(2)抗体価持続の延長、(3)人工エラスチンの生分解性と抗原放出、これらに寄与する分子情報・分子設計に関する作業仮説を立てた。こうした実験的帰納により導出した作業仮説を証明するために必要となる人工エラスチンポリペプチドを設計・調製し、抗原デポとしての人工エラストマーの機能評価を実施した。その結果、人工エラスチンの分子疎水性度と鎖長、得られるハイドロゲルのもつ動的粘弾性および自然崩壊性、酵素耐性・生分解性、そして特異抗体産生能および抗体価持続との関連性について、in vitro/invivoの両側面からの作業仮説に完全にマッチしたとみなせる結果が得られた。すなわち、計3年間の当該助成事業で実施してきたなかで、最終年度に最も優れた人工エラストマー抗原デポを創出することができた。一方で、唯一、ハイドロゲル架橋点の幾何配置と動的粘弾性との関連性に関しては未解明な点を残し、ゲル架橋点・動的粘弾性と抗原放出速度との関連性の分子レベルでの解明は、今後の検討課題である。近年、経験的に理解され用いられてきたワクチンをより洗練された医療技術に仕立て上げようと、その構成3要素「抗原・アジュバント・送達システム」の分子レベルでの統合的理解に高い関心が寄せられている。当該助成事業により見出されたデポ型抗原を演出する人工エラスチンは、ワクチン基盤開発において、送達システムからのアプローチを可能とする機能性分子として位置付けられる。今後、種々のワクチン抗原に対して抗原の放出制御により免疫応答を増強・延長できる送達システム構築への展開が強く期待される。
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Amino Acids
巻: 48 ページ: 2875-2880
10.1007/s00726-016-2345-6
http://www.marianna-u.ac.jp/microbiology/office/003334.html