研究課題
Caffeine-Oxalic acid及びCaffeine-Malonic acidの共結晶体の単結晶をそれぞれ合成し、SPring-8の単結晶構造解析ビームラインBL02B1で超高分解X線回折データを観測した。これらのデータは、精密構造解析により電子密度分布を可視化し、さらに、静電ポテンシャルの可視化にも成功した。Caffeine-Oxalic acidの共結晶体は、Caffeine分子内のイミダゾール環の窒素とOxalic acidのカルボン酸の水素が水素結合を形成することにより構築されている(N…H-O = 1.81 Å)。一方、電子密度分布解析では、等電子密度面に色づけされたカルボン酸部位を見ると電子は局在化しており、この水素結合は、比較的強い静電相互作用であることが分かる。また、Caffeine-Malonic acidの共結晶体も同様に、Caffeine分子内のイミダゾール環の窒素とMalonic acidのカルボン酸の水素が水素結合を形成することにより構築されている(N…H-O = 1.83 Å)。これらの水素結合距離には、有意な差がないために原子間の距離だけからは判断しにくい。しかしながら、電子密度分布解析では、それぞれのカルボン酸部位を比較すると、Malonic acidのカルボン酸部位の電子がOxalic acidに比べて局在化していないことがわかる。従って、Malonic acidにより構築されるCaffeine共結晶体は、Oxalic acidにより構築されるCaffeine共結晶体に比べて弱い水素結合により構築されていることが示唆される。このような知見は、医薬品共結晶体の溶解度などの物性に深く寄与していると考えられる。今後、精密X線構造解析を用いた電子密度分布の定量化により医薬品共結晶体の物性予測への応用が期待できる。
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