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2014 年度 実施状況報告書

TLR4刺激抗体による自己免疫疾患抑制機序の解明と新規予防・治療法の分子基盤

研究課題

研究課題/領域番号 26460058
研究機関東北大学

研究代表者

塚本 宏樹  東北大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (70423605)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2017-03-31
キーワードToll-like receptor / 自己免疫疾患 / 1型糖尿病 / 免疫寛容 / モノクローナル抗体 / 抗体医薬 / 自然免疫
研究実績の概要

膵特異的自己免疫疾患である1型糖尿病の治療には、強化インスリン療法や膵島移植以外の有効な治療法がなく、その予防法や病態の進展阻止・寛解導入を誘導する新規治療法が望まれている。
抗原提示細胞に発現するToll様受容体(TLR)は、病原体共通分子構造(PAMPs)を認識することでサイトカインやT細胞補助刺激分子の発現を増強し、獲得免疫を誘導する。TLR4はグラム陰性菌細胞壁のリポ多糖(LPS)を認識する。我々が作製したTLR4刺激抗体は、抗原との同時投与によってアジュバント効果を示す一方、刺激抗体単独投与では抗原特異的抗体産生を抑制する。LPSには免疫賦活化作用がある一方、エンドトキシントレランスに代表される免疫寛容を誘導することから、TLR4刺激抗体による免疫抑制効果が示唆される。
NODマウスはヒトと同様の疾患感受性遺伝子MHC class IIの感受性ハプロタイプを有する1型糖尿病モデルマウスである。若齢NODマウスにフロイント完全アジュバント(CFA)を投与すると1型糖尿病が抑制されることが知られている。CFAはPAMPsを含むことに着目し、「TLR4刺激抗体による1型糖尿病予防効果」を着想した。
本研究では、TLR4刺激抗体による1型糖尿病抑制機序の解明を通じて、新しい自己免疫疾患の発症予防・治療的寛解導入法の分子基盤を構築することを目的にした。
本年度は、TLR4刺激抗体による1型糖尿病の予防効果、病態進展抑制・寛解導入効果について検討した。TLR4刺激抗体を3-4週齢のNODマウスに2週おきに3回腹腔内投与することにより、有意に糖尿病の発症を抑制できることを明らかにした。また、尿糖の出現が確認されたNODマウスにTLR4刺激抗体を1週間おきに2回投与することにより、糖尿病の発症が抑制された。一方、刺激活性を持たないTLR4コントロール抗体では、これら糖尿病の予防効果、治療効果とも認められなかった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

米国シンシナティ大学のRidgway博士との情報交換の成果もあり、初年度予定していたTLR4刺激抗体による1型糖尿病の予防効果、進展抑制・寛解導入効果について想定通りの結果が得られた。本研究の中核となる結果が得られたため、計画していたTLR4刺激抗体による自己免疫抑制機序について、自己反応性T細胞や抗原提示細胞等の機能的あるいは数的変化に関する細胞生物学的解析を進行中である。膵ランゲルハンス島の病理像については十分な解析に至っていないが、おおむね予定していた通りに研究は進んでいる。

今後の研究の推進方策

TLR4刺激抗体の自己免疫抑制機序の細胞生物学的解析について解析を進める。
当初の計画通りに、樹状細胞(DC)、マクロファージ(Mφ)、B細胞、CD4、CD8 T細胞、制御性T細胞のフローサイトメトリー解析による細胞数変化、DC、Mφ等の抗原提示細胞におけるサイトカイン分泌とT細胞刺激活性、膵島自己抗原に対するT細胞の反応性や血清自己抗体価について継続して検討する。また、膵島について、CD4、CD8 T細胞等の炎症性細胞の浸潤に関する病理解析を実施する。
TLR4刺激抗体による自己免疫抑制機序の病因学的解析に着手する。糖尿病を発症したNODマウスから自己反応性T細胞をリンパ球を欠損した同系NOD-scidマウスに養子移入すると1型糖尿病が再現できることを利用し、TLR4刺激抗体による1型糖尿病抑制効果が自己反応性T細胞の分化抑制によるのかを明らかにする。

次年度使用額が生じた理由

研究は概ね順調に計画していたが、初年度に予定していたTLR4刺激抗体による自己免疫抑制機序に関する細胞生物学的解析と病理解析については現在解析中である。NODマウスが糖尿病を発症するまでには時間を要することから実験計画が翌年度に継続する形となり、次年度使用額として計上することになった。当初より細胞生物学的解析は初年度から二年度にわたる実験計画であるため、次年度使用額への計上はおおよそ想定の範囲内である。

次年度使用額の使用計画

今後の研究の推進方策に記載している通り、初年度より継続中のTLR4刺激抗体による自己免疫抑制機序に関する細胞生物学的解析と、糖尿病が抑制されたNODマウスの膵島病理像の解析に次年度使用額を充当する予定である。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2015 2014

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (6件)

  • [雑誌論文] 【研究戦略・YAKU学~研究現場から~】 機能性抗体によるToll様受容体の活性制御を基盤とした敗血症治療薬開発2015

    • 著者名/発表者名
      塚本宏樹
    • 雑誌名

      薬事日報

      巻: 11542 ページ: 8

  • [雑誌論文] Immune regulation via the generation of extracellular adenosine by CD732014

    • 著者名/発表者名
      Tsukamoto H
    • 雑誌名

      Seikagaku

      巻: 86 ページ: 766-769

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Extracellular adenosine is a therapeutic target for limiting graft-versus-host disease and enhancing the graft-versus-tumor effect against hematopoietic malignancy2014

    • 著者名/発表者名
      Tsukamoto H
    • 雑誌名

      Yakugaku Zasshi

      巻: 134 ページ: 1021-1027

    • DOI

      http://dx.doi.org/10.1248/yakushi.14-00184

    • 査読あり
  • [雑誌論文] A validated quantitative liquid chromatography-tandem quadrupole mass spectrometry method for monitoring isotopologues to evaluate global modified cytosine ratios in genomic DNA2014

    • 著者名/発表者名
      Tsuji M, Matsunaga H, Jinno D, Tsukamoto H, Suzuki N, Tomioka Y
    • 雑誌名

      J Chromatogr B Analyt Technol Biomed Life Sci

      巻: 953-954 ページ: 38-47

    • DOI

      10.1016/j.jchromb.2014.01.050

    • 査読あり
  • [学会発表] 新規ヒトTLR4モノクローナル抑制抗体のエピトープ解析2015

    • 著者名/発表者名
      鵜飼一歩、塚本宏樹、山形由貴、鈴木直人、富岡佳久
    • 学会等名
      日本薬学会第135年会
    • 発表場所
      神戸
    • 年月日
      2015-03-26 – 2015-03-28
  • [学会発表] CD14のLPS結合能とTLR4内在化の機能連関2015

    • 著者名/発表者名
      武内偲乃、塚本宏樹、鵜飼一歩、山形由貴、久保田佳苗、小坂井沙緒、富岡佳久
    • 学会等名
      日本薬学会第135年会
    • 発表場所
      神戸
    • 年月日
      2015-03-26 – 2015-03-28
  • [学会発表] 機能性Toll様受容体4抗体による敗血症治療と病態解析への応用(シンポジスト)2014

    • 著者名/発表者名
      塚本宏樹、富岡佳久
    • 学会等名
      第16回応用薬理シンポジウム
    • 発表場所
      松島
    • 年月日
      2014-12-04 – 2014-12-05
  • [学会発表] 機能抑制型抗ヒトTLR4モノクローナル抗体は不活性型TLR4二量体構造を誘導する2014

    • 著者名/発表者名
      山形由貴、塚本宏樹、鵜飼一歩、鈴木直人、富岡佳久
    • 学会等名
      第87回日本生化学会大会
    • 発表場所
      京都
    • 年月日
      2014-10-15 – 2014-10-18
  • [学会発表] シースレスインターフェイスを用いたCE-MSによる低分子化合物分析法の検討2014

    • 著者名/発表者名
      陣野大輔、齋藤一樹、由利謙典、武川力永、塚本宏樹、鈴木直人、阿部高明、富岡佳久
    • 学会等名
      第53回日本薬学会東北支部大会
    • 発表場所
      いわき
    • 年月日
      2014-10-05
  • [学会発表] A validated quantitative LC-MS/MS method using isotopic MRM transitions to evaluate global ratios of modified cytosines2014

    • 著者名/発表者名
      Tsuji M, Matsunaga H, Jinno D, Tsukamoto H, Suzuki N, Tomioka Y
    • 学会等名
      20th International Mass Spectrometry Conference (IMSC 2014)
    • 発表場所
      Geneva, Switzerland
    • 年月日
      2014-08-24 – 2014-08-29

URL: 

公開日: 2016-05-27  

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