研究実績の概要 |
イノシトールリン脂質は3つの水酸基のリン酸化状態の違いにより全8種類が存在し、リン酸化・脱リン酸化酵素により相互に変換されることで、多様な生理機能を制御している。中でも最も遅れて発見されたホスファチジルイノシトール3,5-二リン酸(PI(3,5)P2)は、酵母から哺乳動物に共通して細胞内小胞輸送の制御に関与している。 これまでに研究代表者は、PI(3,5)P2の唯一の生成酵素であるホスファチジルイノシトール3リン酸5ーキナーゼ(PIPKIII)の遺伝子欠損マウスを作製・解析することで、個体発生における必須の役割と腸上皮細胞における生理的な重要性を明らかにし、報告してきた。 本研究課題においては、中枢神経系前駆細胞特異的なPIPKIII遺伝子欠損マウスを作出することで初めて明らかになった「髄鞘(ミエリン)形成におけるPI(3,5)P2の重要性」について解析を進めてきた。その結果、オリゴデンドロサイトにおけるPI(3,5)P2こそが髄鞘形成に必須であることをマウス個体のレベルで明らかにした。平成26年度にはオリゴデンドロサイトの初代培養細胞系における解析についての条件検討を行った。本実験系を用いて、平成27年度以降に、PI(3,5)P2の重要性について明らかにする計画である。 さらにPI(3,5)P2脱リン酸化酵素遺伝子欠損マウスの作製・戻し交配を進め、申請時の計画通りに5系統の flox マウスと、1系統の活性消失変異体ノックインマウスを得ることが出来た。次年度以降に、これらのマウスを用いて、いずれの脱リン酸化酵素が髄鞘形成に関与しているのかを解明する。
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