前年度に引き続き、PC12細胞を用いてNGF刺激による突起伸長作用におけるセラミドキナーゼの関与を解析した。まず、セラミドキナーゼに対するshRNA発現ベクターをレトロウイルスにより遺伝子導入し、セラミドキナーゼを安定的にノックダウンするPC12細胞を樹立した。緑色蛍光基NBDを付加したセラミドを細胞に取り込ませ、総脂質を抽出後、薄層クロマトグラフィーでセラミド代謝物を分離し、NBDの蛍光を検出することでNBD-セラミド-1-リン酸の産生量を対照細胞と比較した。その結果、セラミドキナーゼのノックダウンはNBD-セラミド-1-リン酸の産生量を70%程度抑制した。本細胞を用いてNGF刺激による突起伸長作用を対照細胞と比較したところ、セラミドキナーゼのノックダウンは突起伸長作用に影響しなかった。そこで、神経伝達物質の放出におけるセラミドキナーゼの関与を解析した。3Hで放射標識されたノルアドレナリンを細胞に取り込ませ、カルシウムイオノフォアA23187の刺激により細胞外に放出されたノルアドレナリンの量を計測した。その結果、セラミドキナーゼのノックダウンはA23187によるノルアドレナリンの放出を有意に抑制した。一方、セラミドキナーゼの過剰発現により、A23187によるノルアドレナリンの放出は有意に促進された。これらの結果から、セラミドキナーゼは神経伝達物質の放出に重要な役割を担っていることが明らかになった。
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