研究課題
ロイコトリエンB4(LTB4)受容体(BLT1)の細胞質側複数箇所のリン酸化度合いがリガンド濃度依存的に亢進することを確認した。加えて、このリン酸化修飾を欠失させた変異BLT1は低濃度リガンドに対する応答性は正常型BLT1と差異が無いが、高濃度リガンドに対してはシグナル伝達能や遊走性が正常型とは異なることを示唆した。我々はこうした結果から好中球におけるLTB4/BLT1経路の役割に関し、以下の様な作業仮説を立てた。(1) 低濃度LTB4認識によるBLT1活性化の始まり(遊走は惹起されるが、脱顆粒などは起こらない)→ (2) BLT1の構造変化によるLTB4親和性の低下(低濃度LTB4の結合をトリガーとするBLT1の局在変化、或は、オリゴマー化が起因?)→ (3) 高濃度LTB4によるさらなる活性化(細胞質領域のリン酸化亢進)→ (4) シグナル伝達の変換(リン酸化部位へのアレスチン結合などが関与?)→ (5) 新たな細胞応答の始まり(炎症局所特異的な脱顆粒、活性酸素産生など)。現在、この仮説を立証できる証拠は蓄積しつつある。最終年度である平成28年度にこの作業仮説を立証し、好中球が炎症局所で起こす脱顆粒や活性酸素の産生が受容体活性化初期の遊走段階では起きない理由を明らかにしたい(新しい情報伝達機構の提唱)。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画に加え、新たな受容体リン酸化修飾の生理学的意義を見出すチャンスをつかんだ。最終年度に論文としてまとめることにも目処がついた。
新しい情報伝達制御機構の証明をする必要から、当初予定をしていなかった実験もしなければならない。機器の不足から協同研究の必要が発生している。幸い、協同研究者に恵まれ、順調に推移できると考えている。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件)
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